カルチャー
4月はこんな本を読もうかな。
心地いい春の眠りを惜しんでも読みたい5冊。
2022年4月4日
text: Keisuke Kagiwada
『パッシング/流砂にのまれて』
ネラ・ラーセン(著) 鵜殿えりか(訳)
1920年代のNYでは、黒人たちが独自の文化を追求する「ハーレム・ルネサンス」が花開いた。本書に収録されるのは、そんな時代に生まれた2作の小説。うち1作のタイトルになっている「パッシング」とは、肌の色が白い黒人が白人として生きること。2人の黒人女性を通して、本書はその行為が招く悲劇を描いていて、Netflixで映画化もされた。人種問題、ジェンダー問題など、現在にも通じるテーマが刻まれているので、ぜひ読まれたい。¥4,950/みすず書房
『動物奇譚集』
ディーノ・ブッツァーティ(著) 長野徹(訳)
20世紀イタリア文学を代表する作家ブッツァーティは、“イタリアのカフカ”と呼ばれることもあるくらい、不条理で摩訶不思議な世界観で知られる。そんな彼が生涯にわたってこだわっていた“動物”にまつわる物語を36篇収録したのがこちら。軽く読めるものから、風刺や皮肉が効いたもの、ゾッとするものまで、この作家の多種多様な筆致が味わえ、初心者にもうってつけ。¥2,750/東宣出版
『ギレルモ・デル・トロのナイトメア・アリー』
ジーナ・マッキンタイヤー著 阿部清美 (訳)
ギレルモ・デル・トロの『ナイトメア・アリー』は、なにしろその抜群のビジュアルセンスにやられた。とりわけ、ケイト・ブランシェット演じる心理カウンセラーのカウンセリングルームには、ゾクゾクするしかなかった。こちらはそんな同作の制作秘話に迫った1冊。美麗なコンセプトアートも満載なので、あのビジュアルセンスが追体験できる。¥4,180/DU BOOKS
『絶滅への渇望 ジョルジュ・バタイユと伝染性ニヒリズム』
ニック・ランド(著) 五井健太郎(訳)
現代社会を脅かすオルタナ右翼たちの思想をたどると、ニック・ランドにたどり着くという。本書はそんなランドが、文学者のジョルジュ・バタイユの読解を通じて、人間を廃絶した先の世界を構想する壮絶な哲学書だ。毒にするか薬にするかは、読者しだい。¥3,740/河出書房新社
『レオス・カラックス 映画を彷徨うひと』
青山真治、蓮實重彦、濱口竜介他(著)
映画監督レオス・カラックスの最新作『アネット』が公開中だ。そんな最高のタイミングで彼の解説書が出たんだからこれは読まなきゃ。本人やスタッフへの詳細なインタビューはもちろん、蓮實重彦さん、濱口竜介監督といった日本を代表する映画の語り手たちの論考も収録。そしてなにより先日急逝した青山真治監督が町山広美さんと対談しているのが見逃せない。¥3,520/フィルムアート社
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