TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
LIFESTYLE

【#3】JOIN THE CIRCLE

2022.04.24(Sun)


text: Izuru Shimasaki
photo: Shohei Tsugawa
edit: Yukako Kazuno

 自転車に乗る時、いつもヘルメットをかぶっていると、たとえばコンビニにちょっと買い物に行くような時にでもヘルメットがないと世界が違って見えるくらいの違和感があるので取りに帰ったり歩いて行ったりする。そうした「一度そう見えてしまうと、もう以前の見え方がわからない」ということは大小問わず多くの人の日常の中にあると思う。僕にとってはメッセンジャーを始める前と後がまさにそれで、以前のことが記憶に残らないぐらい世界が変わってしまった。秘密基地のような場所で共同生活を送っていた京都のメッセンジャーたち、大小さまざまなカンパニーがひしめく大都会で、それでも連帯してアーリーキャットやイベントを開催しシーンを作っていた東京のメッセンジャーたち、6つの都市で走ってきたベルリンのメッセンジャー、養蜂もやってるスイスのメッセンジャー、いろんな都市のメッセンジャーにGPSをつけて1日の足跡をアート作品にしてるNYのメッセンジャー。世間的な地位や大きなお金を望むこともなく、誰かが思うところの人並みには遠く及ばない生活だけど、社会の一員として生き、仕事を通じて自己を表現する。仲間たちとの日々を祝福し世界の不幸を悲しむ。

 「一度メッセンジャーとしての生活を経験したならそいつは一生メッセンジャーだ」と言ったのは自転車屋Circlesのボスだった。ある日突然デイジーメッセンジャーを立ち上げ、昼間は来ないオーダーを待ち、夜はラブホテルでバイトしていた僕にCirclesでの仕事と電話を置く小さな机のスペースを融通してくれた。今ではもう電話と小さな机はCirclesにはないけど、スペースだけは残してもらっている。この小さなスペースとメッセンジャーのコミュニティは僕の財産だ。

 こうした地点に立っているので僕が社会を見る目には相当なバイアスがかかっている。それはつまり自転車から見る世界だ。車輪とクランク、チェーンのミニマルな構造、自分の体重よりもずっと軽いにもかかわらず足を地面に着けさえしなければどこまでも連れて行ってくれる乗り物。だけど今、一部のひとたちはこれと全く逆のものから世界を見ているんじゃないか。次回は毎月最終金曜日の夜、世界各地で自転車乗りが集まるクリティカルマスについて書こうと思う。

プロフィール

嶋崎出

しまさき・いずる | 変わった名前なのでメッセンジャーネームもイズル。デイジーメッセンジャー代表。30歳までの腰掛のつもりで始めたメッセンジャーを46歳の今もやっています。シルクスクリーンプリンターでもあり趣味のバンドではオルガン担当。2児の父。富山県出身。

Official Website
http://daisy-messenger.com

 

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