カルチャー

波状と名付けられた回廊の写真展。

石塚元太良: Ondulatoire展@ NUKAGA KOTARO ROPPONGI

2022年3月9日

text: POPEYE

ラ・トゥーレット修道院の回廊

 この写真に音楽を感じた君、いい線いっている。これはフランスのリヨン郊外に建てられたラ・トゥーレット修道院の回廊だ。いまでもカトリックの修道士たちが日々祈りを捧げているこの建物は、建築家のル・コルビュジエの作品(1960年)として知られているが、ガラスの開口部は弟子のヤニス・クセナキスが担当していた。

 クセナキスは少し変わった才人で建築と数学を学んだ後、現代音楽家のオリヴィエ・メシアンにも師事し、作曲家として活躍した人物でもある。クセナキスはこの開口部をオンデュラトワール(波状)と名付け、修道院に音楽的な要素をもたらしたと言われている。そう言われてみるとこのランダムに配されたガラスの開口部は譜面やリズム、音階のように見えなくもない。

写真家、石塚元太良が撮影した回廊の写真プリントを細く裁断して編み直した作品

 今回のNUKAGA KOTARO ROPPONGIでの展示は写真家、石塚元太良が撮影した回廊の写真群に加え、プリントを細く裁断して編み直した作品も展示されている。この作品が気になって石塚さんにメールしてみたところ、こんな返事が返ってきた。

NUKAGA KOTARO ROPPONGI

「編んだのは今回のオンデュラトワールというフランス語に誘われたのと、写真表層の2次元性を再解釈していきたい気持ちから。SNS時代においてツルツルした写真は情報空間に取り込まれていってしまう。編むことで手触りとズレができるから面白い。Textureというタイトルにしたのだけど、テクスチャーはテクストの語源でもあるし、編むという行為自体が文化としてかなり深度があるものだと思うんだ」。

 ちなみに今回の編み込みは綾織と平織りの2種類を使い分けていてそれぞれリズムが異なるそう。そこも音楽構造しているってわけだ。巨大な美しいプリントを前にすると静謐な回廊に佇んでいる気分がする。ゆっくり時間のあるときにぜひ。

INFORMATION

石塚元太良: Ondulatoire展

会期:2022.3.31(木)まで。
会場:NUKAGA KOTARO ROPPONGI 東京都港区六本木6-6-9ピラミデビル2F
時間:11:00~18:00(日月祝休)
https://kotaronukaga.com/