TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
LIFESTYLE

【#3】水族館劇場 観劇のススメ

2021.11.23(Tue)


text & photo: Akira Futami
edit: Yukako Kazuno

前回のコラムにも少しだけ登場した水族館劇場。

その名前も活動も、何かのきっかけがないと知ることがないと思うので、ぼくなりにポパイ読者に向けて、水族館劇場の魅力もしくは観劇のススメみたいなことを記してみたい。

水族館劇場は、1987年に旗揚げした野外劇の役者徒党だ。

野外「劇」といっても演劇ではない。なんと説明したらよいか。例えば、昔各地で行われていた、民衆による鎮守の森の奉納芝居のようなもの。またはサーカスや見世物といったほうが分かりやすいか。枠の関係で詳しくは書けないので、成り立ちや歴史などを知りたい方は、HPもしくは「水族館劇場のほうへ(羽鳥書店)」をお読みいただきたい。

水族館劇場を象徴する代表的なもの。それは4階建てのビルに相当する大きな芝居小屋。その内外に作られる大仕掛けの舞台セット。そして、劇中で使う大きな水槽と数トンに及ぶ大量の水だ。

役者たちは天幕のなかで目まぐるしく現れ消えては時空を飛び超え、セリフ詩(ポエム)を口から放ち、観客を物語の世界へと誘ってゆく。

小屋を建て舞台を作る裏方作業も役者が全てを担う。

だからといって皆が肉体労働者ではない。メンバーは、もちろん建設業の人もいれば、デザイナーもいるし珈琲の焙煎職人もいる。施設で働いている人もいればビルの窓拭きを生業にしている人もいて、そのなかには人間関係や世の不条理から逃避してきた人もいるし、シンプルに芝居が好きで参加している人や、自己表現の可能性を広げたくて参加している人もいる。また、現制作の方は某大学准教授・演劇研究者であり、サポートメンバーには、アーティスト、ギャラリーオーナー、風俗ライター、古本屋などがいる。

職業も経歴も性格もバラバラな人たちが各々の違いを認め、自分にしかできないことを考えながら、集団のなかで其々の役にあたっている。

水族館劇場は(内部軋轢は勿論存在するが)「多様性」を受け入れ、絶妙にバランスを取りながら成り立っている社会だと、ぼくは思う。

公演する土地「場」との関わりを、この劇団はとても大事にしている。関係性を築くところからもう芝居は始まっている、と主宰の桃山邑氏は言う。

来年5月に公演をおこなうことが決まり、座を建立する場は前回と同じ羽村市宗禅寺だ。

このお寺のご住職若住職は、地域のため、そこに住む人々のため労を惜しまず力を尽くされている。また、点と線だけではなく面の活動、垣根を取っ払い広く開かれた場=広場としてのお寺の在り方を常に模索し且つ行動されている方々なので、水族館劇場をとても暖かく迎えてくれている。

宗禅寺での観劇では、都心では味わえないシチュエーションをぜひ堪能してほしい。小屋と隣接する墓地や、駅とお寺を結ぶゆるりとした時間の流れる長閑な往来、そして素晴らしい借景は、ここでしか味わえない。

また、奥多摩も比較的近いし、ちょっと行けば福生もある。周りには羽村市動物公園、玉川上水、まいまいず井戸などの観光スポットもあるので、羽村を小旅行するつもりで観光と観劇を満喫してみてはどうか。

映画や音楽は人々の身の回り、暮らしのなかにすでに浸透しているが、芝居・舞台劇は、前者と同じくエンターテイメントなのに、観るのに何か心の準備がいるようで二の足を踏んでしまう方が多いと思う。

しかし劇場を、いや水族館劇場の芝居を一部のマニアやその方面に詳しいインテリゲンチャや評論家だけのものにするのは非常に勿体無い。

すぐには無理かもしれないけれど、外食する、散歩する、友達に会いに行く、の感覚で気軽に足を運んでいただきたい。

そして胸のすくようなスペクタクルと、水が吹き上がり舞台上方から滝のように水が落ちるさまを目撃した時の、至上のカタルシスをぜひ感じてほしい。

とくにデジタルネイティブ世代にとって、水族館劇場を体験することは、きっとエポックメイキングな出来事になると思う。

メンバーは皆とても魅力的で、ぼくは初観劇の時、映画「天空の城ラピュタ」に出てくる海賊たちと彼らを、知らず知らずのうちに結びつけていた。ドーラ率いる海賊たちは物は盗むし壊すし悪党だけれど、最後には観ている者をとても清々しい気持ちにさせてくれる。そう、水族館劇場の人たちも盗むのだ、人の心を。いや、いつの間にか観客も舞台に立ってるんだから、心だけじゃなく人も拐ってく(笑)

最後に、

今は亡き評論家の坪内祐三氏が水族館劇場を観て「この時代に、彼らは真にアングラをサヴァイヴしている」と評していた、と同業の先輩が教えてくれた。まさに、まさにこの一言に尽きる。

水族館劇場を観ると、いつも人間の熱量に、感動してしまうのだ。

プロフィール

二見 彰(流浪堂)

ふたみ・あきら | 2000年創業の東急東横線・学芸大学駅近くの古書店。持ち込み&出張買取りやってます。ぜひご利用ください!

東京都目黒区鷹番3-6-9-103
木曜定休

https://www.facebook.com/ruroudou/
SHARE: