カルチャー

11月はこんな本を読もうかな。

文化の秋を満喫するための5冊。

2021年11月1日

text: Keisuke Kagiwada

『ポール・トーマス・アンダーソン ザ・マスターワークス』
アダム・ネイマン (著) 井原慶一郎(訳)

つい先日公開された予告編から既に傑作臭がぷんぷん漂う最新作『Licorice Pizza』が待ち遠しいポール・トーマス・アンダーソン監督。彼の全作(MVも含む)を解説しつつ、その魅力に迫る壮大な1冊。『ブギーナイツ』のあるシーンを繰り返し観たというサフディ兄弟が序文を寄せているってところも含め、マジで読みどころしかない。¥4,950/DU BOOKS

『何もしない』
ジェニー・オデル(著) 竹内要江(訳)

タイトルから装丁までとことんミニマムで、一見すると自己啓発本のたぐいかと思いきや、内容はかなり攻めている。なんせ「何もしない」を「する」ことこそ、世界を変える可能性があると示唆されるんだから。まさにくまのプーさん主義! ちなみに、オバマ元大統領の年間ベストブックにも選出されたらしい。¥2,530/早川書房

『アポカリプス・ベイビー』
ヴィルジニー・デパント(著) 齋藤可津子(訳)

フェミニズムエッセイの名著『キングコング・セオリー』が話題の著者によるベストセラー小説。ぱっとしない人生を送るアラフォー女性と、裏社会で名を馳せる敏腕女性私立探偵のコンビが手を組み、行方不明となった少女を探すというスリラーだ。生きていたら、ジャック・リヴェット監督に映画化してほしかったなぁ。¥2,640/早川書房

『ローベルト・ヴァルザーとの散策』
カール・ゼーリヒ(著) ルカス・グローア他(編) 新本史斉(訳)

我らが三宅唱監督作『きみの鳥はうたえる』にも、その著作がちらりと映ったドイツ語圏スイスの作家、ローベルト・ヴァルザー。彼は作中に散歩シーンを描いたことで知られるが、その人生にも散歩は欠かせなかった。本書で綴られるのは、晩年のヴァルザーと著者が散策しながら語り合ったこと。「私たちが為すべきは散歩です。あなたもそうは思いませんか?」って、ヴァルザーさん、まるでシティボーイみたいなことを言いますな! ¥4,180/白水社

『映画論の冒険者たち』
堀潤之、木原圭翔(編)

サイレント期から現代に至るまで、映画はもう本当にバラエティ豊かな仕方で語られてきた。本書では中でも独創的な映画論者21人が紹介された入門書。ラインナップは、ベーラ・バラージュ、アンドレ・バザン、セルジュ・ダネー、クリスチャン・メッツ、ジル・ドゥルーズ、そして日本からは蓮實重彦と、映画について考える上で避けては通れぬ人ばかり。映画をより深く楽しむためのヒントがここにはきっとある。¥4,180/東京大学出版会