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Hermès / A LITTLE JOURNEY IN MIYAKOJIMA Vol.1
「海のように黒い藍」をめぐる旅の記録
2021年10月19日
photo: Masumi Ishida
title lettering: Aona Hayashi
text: Ryoko Iino
宮古島には深い海のように黒い藍色があるという。
ある若き書道家はそれを目指し、
〈エルメス〉はその姿をドキュメンタリー映画に記録した。
これはある晴れた日の、人生で一番近くて遠い旅。
限りなく黒に近い藍を求めて。
なぜ彼は故郷・宮古島を〝旅〟したのか。
沢木耕太郎は自身のエッセー『旅する力』で、「旅は旅をする人が作るもの」と説く。物理的な距離に関わらず、目指すものがあれば、それは旅。そんなことを考えたのは、ある若者の旅がきっかけだ。
〈エルメス〉はこの秋、様々なかたちで創作に携わる7人の旅の様子を、7作のドキュメンタリームービー『HUMAN ODYSSEY‐それは、創造を巡る旅。‐』に収めた。その旅人の一人が新城大地郎さん。書道家の肩書にとらわれず、墨と筆で表現する29歳。彼が〝旅〟したのは、今も暮らす故郷の宮古島だった。
禅僧であり民俗学者でもある祖父を持つ新城さんは、幼い頃から書に親しむと同時に自らのルーツと向き合ってきた。
「琉球から日本、戦後はアメリカに。変化が多く、自然崇拝などの独特な文化を持った宮古島に生まれた僕の本質はどこにあるのか。書くという行為は、それを探ることでもあるんです」
そう話す新城さんは、旅することでも「自分を客観的に見て、知ることができる」という。それは目的地が海外であればなおさらで、今までの彼にとっての旅とは〝遠い場所へ行くこと〟だった。そんな折に迎えた2020年、思うように外へ行けなくなった彼は、内なる旅と称し、故郷の文化を深く掘り下げることにした。
「普段は墨を使うけれど、地元で生成される色はなんだろうと考えたときに浮かんだのが、伝統工芸の宮古上布に使われる藍色。この島には砂川美恵子さんという、藍の栽培、染め、織りを手掛ける方がいて、彼女の作る藍色が特に記憶に残っていました。それは宮古の深海のように、黒に近い深い色で、美しいんです」
かくして彼は、砂川さんの元を訪ねて藍の製法を学び、藍を墨の代わりにして新しい表現をしようと考えたのだった。
プロフィール
新城大地郎
HUMAN ODYSSEY -それは、創造を巡る旅。-
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