カルチャー

【#1】ねられんねられん

2021年8月11日

僕は絵本描きであり、常日頃は絵本を描いて暮らしている。

だが実は絵本をあまり、いや、ほとんど読まない。世に新しい作品が出ても全然知らない。自分の描いた本も読み返さない。とにかく読んでる量はきっと少ないはずだ。だから家にあるお馴染みの絵本を何度も読むことになる。そのいくつかを紹介したいと思う。

さて、まずはこの本だ。

「ねられんねられんかぼちゃのこ」(福音館書店)

朝晩どんな時にでもこの本を読むと、しばらく不思議な余韻が残る。表紙を見てほしい。かぼちゃくんの顔がなんともいい。シンプルな絵ではあるが、絶妙な甘えん坊な感じがよく伝わってくる。

中身は読んでからのお楽しみだが、複雑なストーリーばかりに慣れてしまうと置いてきぼりにされる生理感覚が、ニョキッと顔をだしてしまうことに気づくだろう。簡潔かつゆるやかでお茶目、不意を突かれる独特で単純な絵のタッチ。平べったい画面の奥行き。

ねられんねられん、、、なぜだ。ねれない、でなく、ねむれない、でもなく、ねたくない、ねむたくない、でもない。ねられん。かぼちゃくんは今日もねられん、なぜだろう。

プロフィール

長田真作

ながた・しんさく|1989年、広島県生まれ。絵本作家。2016年に『あおいカエル』(文・石井裕也/リトル・モア)でデビューし、現在までに30冊以上の作品を手掛けてきた。去年8月、『ほんとうの星』と『そらごとの月』を2冊同時刊行し、話題を集めた。