トリップ

砂浜を登山のように歩く「砂山」という新しい遊びを提案したい。

WHOLE CITY BOY CATALOG

photo: Keisuke Fukamizu
illustration: Yasuhiko Kobayashi, Dean Aizawa (portrait)
text: Toromatsu
2026年7月 951号初出

2026年10月22日

海に着いたら、即刻で
ベアフットスタイルに

砂が熱すぎる真夏と、冷たすぎる真冬を除き、できる限り裸足で歩くことを提唱したい。歩き終わったら、そのまま靴下と靴をはいて帰路に就き、家で洗い流せばOK。海が好きなら多少の汚れなんて気にせずに遊ぼう!

 10代からサーフィンに熱中して20年余り。ここ数年は気分転換で山へ向かうことも多くなっていた。新たに始める遊びは、知識や技量が向上するのがまざまざと感じられて楽しいからだ。もちろん心はいつも海にある。ゆえに僕はふと〝砂浜を登山に見立てて歩く〟のはどうだろうと閃き、実践。この行為を「砂山(さざん)」と名付けて最近、各所に足を運んでいる。

 具体的にどういうものかというと、湘南で例えたら江の島から鵠沼海岸河口までを一合目、そこから辻堂正面までを二合目と仮定し、とにかく砂浜を歩くわけだ。ビーチは日本中、いや世界中にあるから、どこでやっても良い。小さい海岸や大きい海岸を低山高山のように捉えると、海がこれまでと違って見えて追求性も高い。輝く海を眺め、磯の空気を吸い、波の音を聴きながら歩き、浜辺に座り珈琲やお茶を一杯。登山のような達成感や高揚感というよりは、瞑想的な要素が強いように思う。裸足で歩けば更なる開放感が得られる。

 潮の満ち引きがあるのも面白い点だ。潮が引いた波打ち際の砂は固く歩きやすく、海水が届いていない砂浜は柔らかく足を取られ歩くのが険しい。砂の種類もいろいろあるから、コース次第で足腰への負担が変わる。温暖化などで海面が上昇してしまっている影響で、鎌倉の一部の浜は潮が引いていないと歩けなかったりする。浸食された砂浜を今のうちに回れば環境問題に目を向けられるし、歩くと音がなる砂のビーチや、日本三大砂丘といったスポットを巡れば、観光的な視点で遊ぶことも可能。

 あとは下山メシならぬ、海沿いの食を楽しむ砂山メシを考えたり、登山家ならぬ、砂山家の装いを生み出してみたり、とにかくブルーオーシャン。新しい遊びを始める面白さを、身をもって絶賛体感中。

砂浜の持つ個性や、砂浜
が抱える問題に向き合う

砂浜と向き合おう、なんて今更公言せずとも、過去に多くの有識者が砂浜にまつわる書籍を残している。かくいう『ポパイ』も創刊当時から砂浜の魅力に気付いていて、写真左の本『足跡は語る』は、’78年の『増刊:ザ・サーフボーイ』で掲載している一冊なのだ。砂の上についた足跡の写真が見られて、砂浜への想像力が掻き立てられること間違いない。タイトルからして直球な『消えゆく砂浜を守る』も良書。

小林泰彦が考えた砂山家の装い。

 イラストレーターで、名著『日本百低山』でも知られる御年91歳のハイク界のレジェンド、小林泰彦さんのもとを訪問。砂山家の装いについて、指示を仰いだ。

「1984年頃に『ポパイ』からスピンアウトしたような雑誌『オールライト!』で、プールハイキングのページを作ったのを思い出しました。マウイ島のビーチに並ぶ大きなホテル数棟のプールを繋いで歩いていく企画。2㎞くらいあったんじゃないかな。せっかく海沿いを歩くのに、登山の格好をしてハイキングしてたらつまらないから、やっぱり海のものを使ったビーチバムな感じがいいんじゃないですか。〈モンベル〉の沢登り用のサンダルがあれば荒磯も歩けますね。〈クラークス〉のデザートブーツは文字通りデザートですから、間違いないんじゃないですか。メッシュ素材のバッグがあってもいい。砂のついたものを入れても砂が落ちてくれる半面、地面に置くと中に入ってるものに砂がつくから、良し悪しがありますけど。昔の登山家が使っていた尻革はどうですか? 雪の上でも座れるようにカモシカの革でできていて、ゴンスケとも呼ばれてました。あれがあると土や雪の上にも座れるんですよ。熱い砂浜にも座れるし、濡れにも強い。生地を替えてもいいですね」

勝手に提唱、これぞ砂山服!

新品でも古着でも、砂の上で使えそう(&合いそう)なものを探すのが楽しいのなんの。

例えば首への紫外線を防ぐハットは〈モンベル〉から。その名も「サハラハット」ときた。¥6,600(モンベル・カスタマー・サービス☎06·6536·5740)

デイパックは元祖ULハイカー、レイ・ジャーディンの思想を継いだ〈トレイルバム〉の「ビッグタートル」を持ちたい。外のメッシュに砂浜で見つけたビーチグラスを入れよう。¥10,780(ソーズカンパニー☎03·5724·5713)

イギリス軍砂漠部隊の靴をルーツに持つ、〈クラークス〉の「デザートトレック」。タグが砂山家そのもの! ¥25,300(クラークス ジャパン☎03·6628·8417)

小林泰彦さんも推奨のサファリジャケットは、’70年代の〈アバクロンビー&フィッチ〉を発見。¥26,400(モットハウス・トーキョー☎03·6325·2593)

Tシャツはサーフではなく、ビーチコンセプトのものを選びたい。例えば“ビキニ監察”なんてプリントものとか。(筆者私物)

ビーチクリーンにも役立ちそうな〈バテンウェア〉の小型メッシュトート。大きめサイズやナップサックタイプもある。各¥9,350(バテンウェア battenwear.jp/)

プロフィール

砂浜を登山のように歩く「砂山」という新しい遊びを提案したい。

トロピカル松村

とろぴかる・まつむら|1988年、兵庫県生まれ。編集ライター。サーフィン誌の編集を経てフリーランスに。’70〜’80年代のアスレチックブームに精通。日本のサーフサウンドを集めた『MY NIPPON SURFING SOUNDS』の著者で、ジーンズブランド〈CRT〉も手掛ける。