ファッション

HAIRDRESSING FOR COOL JAPANESE

日本男子の清潔感の源流に学ぶ。

2021年7月2日

text: Satoshi Taguchi
2019年12月 872号初出

 太くて硬いとされる日本男子の髪。それを清潔かつクールに整えるなら、きっと日本生まれの整髪料がふさわしいはず。なかでも東京・日本橋の柳屋本店は、1615年創業の老舗。事実、その歩みはすなわち、日本の洒落た大人のヘアスタイルそのものでもあった。

 例えば大正時代にいちはやくスーツを着たモダンボーイ。彼らが髪をキリリと撫でつけるために愛用したのが「柳屋ポマード」だ。1920年に登場し爆発的にヒット。成分は純植物性で、強い整髪力と洗髪のしやすさ(動物性や鉱物性のポマードと比べて)を両立させた。とにかくピシッとした髪型には最適で、キャロル時代のE.YAZAWAのリーゼントもこれによるとか(現在も販売中)

 あるいは’60年代のアイビー族。クルーカットをベースにした短髪が流行した。求められたのはヘアリキッド。程よいツヤと自然な整髪がポイントで、バイタリスやマンダムに続いて柳屋も「アットレー」を発売。当時の広告には、これぞアイビーなスタイルが残されている。

 ちなみに江戸時代のヒット商品は、白檀やムスクの香りを調合したびん付け油の「柳清香」。山本の海苔、山本山の茶と並ぶ、日本橋土産の定番だったとか。このところ使うことの多いグリースも、たしかにほのかにいい香り。しかも洗い流しやすい。ちょんまげの時代から培ってきた伝統が、ここにも生かされている。

インフォメーション

ツヤとセットは長続きするのに洗い流しは簡単。ちゃんとヒマシ油が入ってるのも柳屋らしさ。右から、1615 YANAGIYAヘアグリース(ムスク)¥2,500、YANAGIYAヘアグリース(エクストラハード)¥850(ともに柳屋本店/柳屋本店 お客様相談室☎03・3808・2654)