TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#4】山のおみやげ/きのこ編

執筆:Yuri Iwamoto

2025年11月4日

山菜採りもそうですが、きのこ狩りは特に、自分の奥に眠る縄文人のDNAが目を覚ますような感覚があります。
狩りを続けているうちに(まるで間違い探しをしているときのように)どんどんきのこが目に飛び込んでくるようになります。
「ゾーン」に入ると、車に乗っていてもきのこを発見できるくらいレーダーが研ぎ澄まされます。隠された宝物を見つけていく気持ちよさは格別で、脳内にアブナいホルモンが分泌されているのでは、と思うほどです。歩き回って食べ物を探すという営みには、本能的な喜びがあり、まさにDNAに駆り立てられて動いているような感覚がします。

きのこがよく育つ良い森。

きのこを始めたきっかけ

山小屋仲間の中に、きのこ伝道師が何人かいました。彼らにイロハを教わり、きのこ狩りの世界に入ることができました。(そのうちの一人は、きのこ研究者として活躍しています!)

先生方に教わったことは「きのこ狩りは予習が肝心」だということです。まずは植生図を参考にフィールドを決めたら、季節や樹種から狙う食菌の目星をつけます。図鑑を熟読し、似ている毒キノコの特徴も併せて頭にいれておきます。

大収穫の様子。周囲に生えてるきのこの顔ぶれも参考にしつつ、狙いのきのこを探していく。

どんなに立派な美菌でも、「自信のないものは採らない」を徹底します。
毒きのこの分類は年々更新されており、去年まで食用だったものが今年から毒きのこに指定されるなんてこともあります。誰も見たことのない、図鑑にも載っていない謎イグチが出現する年もありますし、特定の地域では毒とみなされるきのこもあります。

きのこが胞子を撒けるように、袋ではなくカゴを使うことや、柄をきれいに削ぐためのナイフを持つことも教わった。また、熊よけや仲間への合図にホイッスルもあると便利だ。

ここからは、よく採れるきのこと美味しい食べ方をご紹介します。

ハナイグチ/豚イグチ

豚バラ、にんにくの芽、ハナイグチの炒め物。
たまたますれ違ったオジさまから授かった「豚イグチがうめえぞ!」という啓示をもとに、きのこ先生が編み出したレシピ。 ハナイグチの甘やかな香りとふっくらした歯触り、ヌルシャキ感を存分に味わえる。

チチタケ/バターごはん

チチタケといえばうどんだが、これもぜひ試してみてほしい。
チチタケを細かく刻み、バターと塩と胡椒で炒め、お好みで醤油をチロリと挿す。チチタケ特有のイカのような濃いダシ感が口いっぱいに広がって最高だ。

アカヤマドリ/クリームパスタ

日本版ポルチーニの一つ、アカヤマドリ。
風格のある佇まいだ。炒めると黄色いダシが出てくるので、素直にクリームパスタにまとめてありがたく頂いている。

マスタケ/ビーガンかしわ天

ビビットなオレンジのマスタけは森で目を引く。
強い旨み、繊維感、モグっと噛み付いた時のボリュームは、ほぼ鶏むね肉と同じだ。天ぷらにしたらもう、80%鶏肉と言えてしまう。幼菌のおいしさは想像を超えてくるものがあるが、育つと食感は発泡スチロールと化す。噛むとパキュ! と不快な音が響き、口内の水分がなくなる。出会うタイミングがかなり大事なきのこだ。

ショウゲンジ(コムソウ)/牛丼

ジャキジャキとした歯応えが小気味いいきのこ。鍋も汁も嬉しいが、牛肉の旨みをたっぷり吸った彼はひときわ輝いていた。

ハナビラタケ/スキヤキ

出会ったらブチ上がってしまうかわいさ。
どこかの高級料亭では、「しらたきの代わりにハナビラタケを入れてすき焼きをする」と聞いてから、そっくりマネをしている。確かに格上げされる感じがしている。

クロマイタケ/ホイル焼き

貝のような旨み。アワビかバイ貝かというダシ感が口中に広がる。もったいなさすぎていつも焼いて塩をつけるだけで食べ切ってしまう。マイタケの中でも別格である。

キアシヤマドリタケ

栗のような甘みがありおいしかった。

おいしすぎるきのこ。はじめて食すきのこはまず、シンプルに塩で味わうようにしている。左上からキアシヤマドリ、マスタケ、タマゴダケ、マイタケ。

タマゴダケ/スープ

ナッティな香りのダシを生かしたスープ。
卵の状態の幼菌は例外的に生食できるらしいので食べてみたが、ちょーうまい! という感じではなかった。なかなかできないことなので、お試しあれ。

きのこ狩りをするようになってわかったことは、スーパーで売られているキノコはスーパースターであるということです。マイタケ、シイタケ、ブナシメジは山で出会ったら叫ぶくらい、おいしくてレアな存在です。それを百数十円で買える文明のありがたさを噛み締めています、、、。

プロフィール

Yuri Iwamoto

いわもと・ゆり|1993年、埼玉県生まれ。富山県在住。ガラス作家をしながら、夏は北アルプスの山小屋で暮らす。あまりガラスを飼い慣らしすぎないことがモットー。趣味は山菜採りやきのこ狩り。

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