TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#4】力士と洋服

執筆:佐田の海 貴士 

2025年11月2日

先週話した通り力士には「外出時は和装」という決まりがあります。
よく「お相撲さんって洋服着ないんですか?」と聞かれることがあります。洋服を全く着ないかと言えばそんなことはなくて、家の中や、トレーニング中は普通にTシャツやジャージを着ます。
ただ問題はサイズ…自分は5L〜6Lなのですが、大きな力士になると8L〜10Lにもなります。
もちろん、普通のお店に並んでいるサイズではないので家族で買い物に出かけても自分の服を物色することはありません。

お相撲さん御用達の大きなサイズ専門店はありますが、みんな同じところで買うので被るなんてことも。サイズありきの買い物なので色やデザインを妥協して着たことも何度もありますね。

そんな中アパレルブランドである「無敵時間」がサポートしてくれることになり、自分の「洋服事情」は一変しました。
相撲界周りの誰も着ていないものを、自分だけが着ているという優越感は良いものですね。
無敵時間さんと、自分のことをサポートしてくれる地元の友人とでコンセプトを共有し様々な提案をしてくれます。
またどんなにデザインが気に入っていても、我々は髷があるのでプルオーバーのパーカーは都合が悪い…となるとすぐにジップアップのパーカーを作ってくれます。洋服のことでここまで痒いところに手が届くのはありがたいですね。

また僕に向けたコンセプトとして“BIG SUMO NERD”というロゴの商品があります。
「超相撲オタク」という意味なのですが、「24時間相撲のことを考えてる、常に相撲の研究をしているまさに自分のことだ」と思いました。
背中にも「時間ニナレバ敵ハ無シ」と入ってるんですが、実際土俵上ではそれくらいの気持ちにならないと平均160kgを超える男達とは闘えないです。
トレーニング中にキツくても、不意に姿見に映るロゴを見て「あぁ俺は超相撲オタクだ」とか「今、無敵時間(ゾーン)入ってる」と思って気合いが入り直すこともあります。

最近で本場所の行き帰り、巡業の会場でもよくファンの方が着用してくれてるのを見かけるようになりました。「あぁ、今日最低一人は佐田の海ファンいる」とか考えながら、心の中で喜んでいます。

ただ文明開化から150年以上経った今でも、髷を結って着物を着る「力士」という身分をもっともっと楽しみたいと思っておりますので、友人がSNS等にUPしてくれるトレーニングの様子などの洋服の姿を箸休めに見て楽しんで頂けたらと思います。

相撲好きな方も、この連載をきっかけに相撲に興味を持ってくれた方もぜひ本場所や巡業を観に来てください。そして「佐田の海」を応援してくれたら嬉しいです。

最後に自分みたいな野暮ったい人間でも、長く現役を続けているとこんなお声かけがあるものですね。
中々物を書くことがない人生だったので新鮮でした、いつもサポートしてくれる皆さま、ファンの皆さま、お声かけ頂いた編集部の皆さまに感謝申し上げます。
4週間読んでいただきありがとうございました。

プロフィール

佐田の海 貴士

さだのうみ・たかし|1987年5月11日生まれ、熊本県熊本市東区出身。本名、松村要。境川部屋所属。身長182cm、体重143kg、血液型O型。父は元小結・佐田の海鴻嗣。2003年春場所初土俵、2010年新十両、2014年新入幕。最高位は西前頭筆頭(2015年7月)。三賞は敢闘賞3回、金星1個。得意は右四つ・寄り。2025年現在、幕内で活躍中。