TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#3】魅力を持つプロダクト:Banana Equipmentの影響力
執筆:Outdoor Recreation Archive
2025年10月25日
Outdoor Recreation Archive
text: Outdoor Recreation Archive
translation: Tsukasa Tanimoto
edit: Miu Nakamura
Outdoor Recreation Archiveは、アウトドアブランドや雑誌の有名・無名を問わず、数千点におよぶカタログを収蔵している。けれど、その活動はそれだけにとどまらない。写真や業務記録、スケッチ、技術的な設計図など、ブランドの背景にあるストーリーを伝える資料の保存庫としても機能しているのだ。Banana Equipment(バナナ・イクイップメント)の資料も、その一部として保管されている。
Banana Equipmentは、コロラド州エステスパークでNancy Grimes(ナンシー・グライムズ)とJim Heiden(ジム・ハイデン)によって創業された。二人の共同創業者は、アウトドアのある暮らしの中で働き、遊び、そしてそのライフスタイルを基盤とするビジネスを築くことを目指していた。当初はアウトドアの街で暮らすための口実のような試みだったが、やがてその活動は、当時の精神を体現する真にオーセンティックで革新的なブランドへと成長していく。
創業当初からHeidenは素材の実験を重ね、最初の商品であるゲイター(登山用スパッツ)にはサンブレラ生地、当時新開発された3M社のシンサレート合成中綿、そして何よりもGORE-TEX(ゴアテックス)を採用した。Banana Equipmentは、Early Winters(アーリー・ウィンターズ)やSierra West(シエラ・ウエスト)と並び、GORE-TEXを使ったジャケットやウィンドパンツ、そして代表的なアノラック「Bananorak(バナノラック)」を販売した、先駆的なブランドのひとつである。
「上質なアウターウェアのメーカー」として自らを掲げたBanana Equipmentは、創業間もない段階で新素材GORE-TEXと協働し、互いに成長を遂げることとなった。その結果、GORE-TEXはやがて防水透湿素材の代名詞となる。アウトドア産業の歴史を振り返れば、常に小規模で意欲的なブランドこそが新素材を試し、イノベーションを起こし、新しいスポーツやカテゴリーを広めてきた。Banana Equipmentも、その流れをつくった一員だった。
Heidenの好物にちなんで名づけられたBanana Equipmentは、1970年代のアウトドアブームを象徴する存在でもある。Banana Equipmentが発行した初めてのカタログは全国の小売店に郵送され、手描きのデザインを通じて、素朴で実直なスピリットを持つブランドとして名が知られた。1980年に会社が売却され、Chinook(チヌーク)として再出発を遂げるころには、従業員50名を抱える規模にまで成長し、エベレスト遠征隊に装備を提供するなど、アウトドアウェアの未来を押し広げる存在になっていた。
Banana Equipmentのようなストーリーは、なぜこうした歴史を残すことが大切なのかを教えてくれる。アーカイブが保存しているのは、単なる古いカタログではない(とはいえ、カタログの収集ももちろん続けているが!)。そこにあるのは、人々に愛され、実際に使われたギアを生み出した人々の物語であり、ブランドとユーザーの深いつながりを示す証だ。Banana Equipmentのスローガンに倣えば、それはまさに「魅力を持つプロダクト」を一つひとつ通じて、彼らがアウトドアカルチャーそのものを形づくってきた歴史なのである。
プロフィール
Outdoor Recreation Archive
ユタ州立大学の図書室に併設された、1900年代から現在までのギアカタログや広告、ブランド資料を蒐集、保存するアーカイブ機関。広報活動と新たなコレクションの発掘を担当するチェイスと、寄贈された資料の整理、記述、保存を担当するクリントによって運営されている。コレクションは1万5000点を超えており、書架は誰にでも開かれている。
Official Website
https://library.usu.edu/archives/ora
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