TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#4】カニカニ詐欺に注意!

執筆:佐塚真啓

2025年10月31日

一日の作業を終え、陽も傾きだした17時半ごろ、携帯に知らない番号から電話がかかってきた。いきなり、元気のよい若い男性の声で「小平市にお住いのサツカマサヒロさんのお電話でしょうか!?」と。小平市は大学生だった10年以上前に住んでいた場所だった。「ん?」と思いながらも、小平市に住んでいたこともあったので、「どんなご用件でしょうか?」と聞くと、「以前、そちらのほうに海産物をお送りしたことがあって、過去に送った伝票をみながら電話をかけさせていただきました!」という。「んん?」と思いながらも、「それで?」と聞くと、「今、海産物祭りをやっていて、美味しいカニがあるので、ぜひサツカマサヒロさんに食べていただきたくてお電話しました!」と少しなまった威勢の良い口調でいってきた。「そちらはどちらさまでしょうか?」と聞くと、「北海道札幌の田中水産です!」と、そして「いまカニが美味しくなってきていて、そのめっちゃ美味しいカニを、パッン!パッン!に詰めてお送りします。2万5千円でどうでしょう!!?」とまくしたててきた。「いやいやいや、、、」と大きな違和感をいだきつつも、なんだか、この威勢の良い北海道なまり?のある男性との会話が、少し面白くなってきてしまった。「カニ以外もあるんですか?」と聞くと、「はい!海産物5種詰め合わせ!これもパッン!パッン!に詰めて、オトウサンに食べてもらいたいから、一万五千円で!どうでしょう!!?」と、途中からこの男性は僕のことを「オトウサン」と呼びだした。どうやら、会話の中で、僕のことを相当な年上だと思ったらしい。それも面白くなってきてしまい、つい、「イクラとかもあるんですか?」と聞くと、間髪入れずに「もちろん!そしたら、これもオトウサンに食べてもらいたいから、パッン!パッン!に詰めて一万円で!どうでしょう!!?」といってきた。絶対におかしいと思いつつも、面白くなってきてしまい、どんなものが送られてくるのか興味もでてきてしまっていた。そして、ふと、2年前に98歳で亡くなった祖母と北海道旅行に行ったことや、その祖母が海産物が大好きだったこと、地方の名産品を取り寄せては楽しんでいたこと、そして、このイクラが送られてくるという日が、10月15日、それは祖母の誕生日で、生きていたら100歳になる記念日でもあった。そんなもろもろが重なって、つい詐欺だと思いつつも、「そしたらイクラをパッン!パッン!に詰めて送ってください!」と言ってしまっていた。支払いは代引きらしく、送り先の住所を聞いてきた。さすがに住んでいる家の住所を教えるのは嫌だったので、アトリエの住所を伝えることにした。横で話を断片的に聞いていた友人にアトリエの住所を聞くと、首を大きく横にふって、それは詐欺だからすぐ電話を切れといって、[海産物、詐欺、田中水産]とスマホで検索して[カニカニ詐欺]なるものを見せてくれた。しかし、もう詐欺だとわかっていても、もろもろの興味のほうが勝ってしまっていた僕は、友人の静止を振り切り住所を伝えてしまった。友人も呆れはてていた。

そんな電話から数日間、もしかしたらパッン!パッン!のイクラが届くかも、と少し期待しつつ、詐欺にあってみたことを楽しんでいた。10月15日、仲間4人とアトリエで作業をしていた昼、一万円の代引きでイクラが届いた。受け取った瞬間に、パッン!パッン!には入ってはいないことがわかった。そして、箱をあけると、くしゃくしゃの新聞紙の下に、ポツンと100gのパック詰めされた冷凍イクラが入っていた。あまりの小ささに笑ってしまった。その場にいた友人に、ことの顛末をははなし詐欺にあった理由を、「面白そうだったから」というと、「さつかさん、まったく面白くないです。ダダ滑りです。」「さつかくんは、悪い人に悪いことをするお金をあげちゃったんだよ。」「さつかも、めでたくカモリストにのっちゃったね。」「みんなが大切にしているお金の価値を軽んじている。」という様々な方向からの指摘をうけ、自分のしたことがとても恥ずかしくなってきて、強く反省した。

みなさん、いきなり電話がかかってきて、「カニ」「代引き」という言葉がでてきたら、それは[カニカニ詐欺]の可能性が高いです。気を付けてください。興味がわいてきても、すぐに電話を切ってください。この僕のくだらない経験をお伝えすることによって、このような詐欺にあう方が1人でも減ることを願っています。注意深く生きよう!

プロフィール

佐塚真啓

さつか・まさひろ|美術家。1985年静岡県生まれ。丑年。おうし座。長男。A型。右利き。2009年武蔵野美術大学卒業。卒業後からは民具などの博物館資料を図化する事を始める。2011年青梅市に移住。2012年友人と共に「国立奥多摩美術館」を企画。「美術」という言葉が色々な物事を考えるときのキーワードになっている。2018年から「株式会社佐塚商事 奥多摩美術研究所」を主宰。2025年から「絵かきの里」を企画。座右の銘は、「来た時よりも美しく」。1日8時間の睡眠を心掛けている。冬はガタガタ震え、夏はダラダラ汗をかき過ごしている。

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