TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#1】ダブとの出会い
執筆:エイドリアン・シャーウッド
2025年10月9日
こんにちは、エイドリアン・シャーウッドです。大人になってからは音楽プロデューサーとして活動していてレコードレーベルを運営してきました。スタジオでもライブでもバンドをプロデュースしてきて、やがて自分名義の作品も何枚かリリースしました。ありがたいことに、これまで本当に多くの素晴らしいアーティストと一緒に仕事をしてきましたが、やっぱり僕の原点であり、最も愛しているのはジャマイカ音楽です。あの音色やイコライジング、そして優れたプロダクションの中に広がる“空間”がたまらなく好きなんです。
僕が最初に「ダブ」というものを意識したのは、1974年にリリースされた『King Tubby Meets The Upsetter At The Grass Roots Of Dub』と『Ital Dub』。当時はまだ中学生で、ワイコムのマーケットに友人のジョーがやっている屋台があって、そこでレコードを買っていました。
最初の頃、ジャマイカのレコードは、A面には歌入りの曲が入っていて、B面はそのインストゥルメンタルになっているのが定番でした。でも正直、当時のインストはちょっと退屈で、B面でもう1曲歌ものが聴きたかったから「なんだ、損したな」と思ったりしていました。ところが、リー・ペリーやキング・タビーといった人たちがB面を面白くしてくれた。冒険的なダブを作るようになって、それがとても刺激的に響いたんです。いわゆるルード・ボーイの若者文化に基づいた楽しいレゲエから、“ルーツ”や“カルチャー”へと動きがシフトしていって、ダブはさらに実験的になり、やがて1枚のアルバムを通して展開するようなコンセプトにまで進化していきました。
プロデューサーたちはインストのアルバムを作り始めて、オーガスタス・パブロなんかはその中心人物でしたし、リー・ペリーも『Blackboard Jungle』(1973年)といった型破りなインスト作品を生み出しました。ダブは、音を抜いたり、リバーブやディレイ、サウンドエフェクトを加えたりするものなんです。声があれこれ飛び込んでこないからすごく聴きやすくてリラックスして楽しめた。そういう素晴らしいレコードが出てきたとき、僕は友人たちと集まってよく聴いていました。
ジャマイカではブラック・コンシャスネス(黒人意識)のムーブメントが起きていて、イギリスでも多くのファン、たとえば反ファシストのスキンヘッズたちがこの音楽に共鳴していました。そこからマッドネスやスペシャルズが登場して、明るく楽しい音楽を作り、突然その空白を埋めたんです。この音楽は、いわゆる“スモーキー・ベア”にも強く支持されていましたね。
プロフィール
エイドリアン・シャーウッド
1958年、ロンドン生まれ。ソロ作品、タックヘッドに代表されるバンドとしての活動、また彼自身が主宰する〈On-U Sound〉レーベルを通して唯一無二の美学を体現するクリエイティブな存在として、常にアーティストとしての仕事とプロデューサーとしての仕事を並行して行ってきた。
8月にリリースされた13年ぶりとなるソロアルバム『The Collapse Of Everything』をひっさげ、11月にはDUB SESSIONS 20th Anniversaryで来日決定!
Instagram
https://www.instagram.com/onusherwood
DUB SESSIONS
https://linktr.ee/dubsessions20th
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