トリップ
バイセリアとマリーナ・デル・レイで観光とローカルの狭間に揺れる。そして、空の旅。
カリフォルニア2000kmの旅。
2025年9月6日
photo & text: POPEYE
cooperation: カリフォルニア観光局、バイセリア観光局、マリーナデルレイ観光局
カリフォルニア2,000kmのロードトリップ、最後のドライブはバイセリアを経由して、マリーナ・デル・レイへ。
セコイア国立公園を出た後はキングスキャニオン国立公園を通過して(この2つは隣接している)、バイセリアに到着。シエラネバダ山脈のふもとにある小都市で、ヨセミテ、セコイア、キングスキャニオンへアクセスする拠点であることから、カリフォルニアの「3つの国立公園の玄関口」と呼ばれ栄えている。ちなみにドゥービー・ブラザーズのトム・ジョンストンの出身地でもあるらしい。
滞在したのはダウンタウンの『The Darling Hotel』。裁判所をリノベーションしたアールデコ調の建物で、屋上のルーフトップバーからは街全体が見渡せる。夜はカリフォルニアワインのテイスティングディナーに参加して、ローカルの人たちにバイセリアの魅力を教えてもらった。
翌朝に訪れたのは木材加工工場を改装して作ったコーヒーショップ兼ロースタリーの『Component Coffee』。地元の若者、出勤前の紳士淑女が朝から集まる居心地の良いカフェだ。朝食後はダウンタウンにある映画館『Fox Theatre』や駅舎を改装したレストランとして営業していた『The Depot』など名所を見学しながら、小さな街の歴史と文化を学ぶ。いわゆるメジャーな観光都市ではないけれど、だからこそ、今回の旅の中で最もカリフォルニアの生活を身近に感じることができた。
そして、ここから最後のロングドライブ。4時間かけて最終地点マリーナ・デル・レイへ向かう。
マリーナ・デル・レイはカリフォルニア最大の人工マリーナで、約5,000隻ものボートが停泊している。湿地帯だった場所を、1960年代に埋め立てて作りあげたという成り立ちがアメリカらしい。そんなマリーナ・デル・レイのランドマークが最後に宿泊する『The Ritz-Carlton, Marina del Rey』だ。1991年に開業したこのホテルは、リッツ・カールトンの名にふさわしい優雅さとヨットハーバーならではのリラックスした雰囲気がどちらも味わえる。港に並ぶヨットとオレンジ色に沈む夕日を部屋から眺められるのはこのホテルの特権。プールサイドや近所を散歩した後は『Sisley Paris』のSPAを体験。8日間の旅の疲れが95%は消え去った。
自転車を借りて、ヴェニスビーチやサンタモニカまで足をのばすのもおすすめだ。レンタサイクルで20分も走ればサンタモニカ・ピアの観覧車が見えてくる。ホテルを拠点にしたら、観光の幅がぐっと広がる。オーシャンビューのカフェと真っ青な空とジョギングする若者たちを見ていると、やっぱりシティサイドも悪くないと思う。でもやっぱりあの大自然に戻りたい。と、考えている間にそろそろ帰国の時間。
帰国の便はロサンゼルス国際空港ではなく、あえてオンタリオ国際空港をチョイス。なぜなら国際線の便数が少なく、出入国がスムーズというメリットがあるから。ここから台湾のスターラックス航空に乗り、台北経由で成田へ向かう。
スターラックス航空は2018年に創設した新しい台湾のエアライン。タイミングによっては一般的なエコノミー価格でプレミアムエコノミークラスに乗れるので、優雅な空の旅を求める人にはぴったりな賢い選択肢だ。キャビンのデザインはホテルのようで機内食の台湾料理も絶品。満腹になり、台北までほぼノンストップで眠っていた。
台北の桃園国際空港では魯肉飯や小籠包といった台湾料理が用意されているGalacticラウンジ(ビジネスクラス以上の方が利用可能)があるから乗り継ぎもノーストレス。空港内のショップで少し買い物を楽しみ、最後の短いフライトで成田へ。
全長2000kmを車で移動した8日間の旅はここで終わり。目的地の素晴らしさはもちろんだけど、ロードトリップの魅力は、移動する間に何気なく寄ったカフェやガソリンスタンドの匂い、ひたすら続く果樹園の景色、ショッピングモールの店員さんのやる気のない接客などなど、観光地ではあまり遭遇しない土地の素顔が垣間見えることかもしれない。そのときは特に何も思わなくても、しばらく時間が経つと、何気ない情景が突然蘇ってくることがあって、その瞬間がたまらなく嬉しい。