ライフスタイル
取り留めもない日々が、飛ばされてしまう前に。
お部屋のマイナーリーガーズ Vol.3:ペーパーウェイト
photo: Kanta Torihata
text: Fuya Uto
edit: Kosuke Ide
なくても(ぜんぜん)困らないけれど、あったら毎日の生活が(かなり)楽しくなる。騒がず目立たず、忘れられてる、マイナーだけどイカすヤツら。
そんなお部屋の「名脇役」たちについて改めて目を向け、レコメンドする連載企画。マイナーリーガーズの歌を聴け。
2025年9月9日
Web媒体をやっていてナンだけど、「紙で残す」という重要性を今一度考えてみたい。些細なメモから写真まで、すべてが携帯ひとつに集約されがちな現状に、一抹の不安を抱いているという人は少なくないはず。もしも携帯が水没したら? 紛失したら? 筆者自身も、つい先日に彼女と「携帯の写真をプリントしないとまずいかもね」なんて話していたところ。母からは「(病に伏せている)祖母とのメッセージのやり取りをすべて残したいのだけど」と相談があった。
携帯は手軽で便利でまったく問題ないのだけど、突如これまでの記録が一瞬にしてなくなってしまうのも事実。日常の取り留めもないけど大事なことが、跡かたもなく……! そうならないために、やはりデータをPCにバックアップするだけでなく、「物質として保存する」ことが大事なのではないだろうか。
紙の需要が減ったことで、無くなっていくものも当然ある。今回取りあげる「ペーパーウェイト」もまた、そうした背景の中で存在感を消しつつある筆頭だ。歴史を遡ると、19世紀半ばのフランスで郵便文化の発達とともに登場したこのアイテムは、その名のとおり、紙モノが風で飛ばされるのを防ぐ「重し」として作られた。つまり重ければ何でもいい。日本には古くから文鎮(発明は古代中国らしい)という伝統的な道具もあるが、デスクに並ぶコップでも海岸で拾ったお気に入りの石でも、それこそ携帯とか、正直わざわざ用意するまでもなく、身の回りのもので事足りる。
〈CMY CUBES〉のアクリルキューブ/オーストラリアのキネティックアートメーカー〈CMY CUBES〉が手掛ける、各表面にCMYの原色が配されたアクリルキューブ。入り込む光の角度やキューブの向きで無数の色を楽しめる。¥7,700(NICK WHITE ☎︎03・3407・3110)
〈ミナ ペルホネン〉と〈イッタラ〉のガラスバード/〈ミナ ペルホネン〉のデザイナー・皆川 明氏が描き下ろした鳥の絵をモチーフに、フィンランドの〈イッタラ〉のガラス工場で制作。¥8,250(minä perhonen elävä Ⅱ ☎︎03・6825・8037)
しかし、だからこそそこに個性を発揮する「余白」が無限に広がっているわけで。大きさ、素材、形状は実にさまざま。その自由度、その「無くてもいいけど作られている」という、ある種のチャーミングな様にそそられる。
例えば、〈CMY CUBES〉は各表面にCMYの原色を使用していて、差し込む光の色で表情が変わるユニークな設計。同じく光による透け感を楽しむなら、〈イッタラ〉と〈ミナペルホネン〉が共作するガラスの小鳥もかわいい。
デザイナー・鵜川大さんが手掛ける一点ものは、ニョロっと摘まめる文鎮のごとき佇まい。〈Shizu Designs〉の逸品も然り、デザイン性が高いと、雑に積まれた本やタブロイド紙の上に置くだけで、なんだか空間が締まって見える不思議な効果もある。
鵜川大さんのペーパーウェイト/デザイン業と並行してハンドメイドで作品を制作する鵜川大さんの逸品は、持ち上げるための「摘まみ」がアクセントになった有機的なフォルム。形状もさまざまあるので、ぜひ店頭にて。¥44,000(HOEK☎️03・6805・0146)
WRAPPED ROCKS TOMEISHI /カリフォルニア発の母娘ユニット〈Shizu Designs〉の一点もの。日本庭園や神社の境内において立ち入り禁止を示すために用いられる「止め石」を着想源に、オレゴンやカリフォルニアの海岸で拾った石の形状に合わせてラタンが結ばれている。¥13,750(山と猫)
素朴な形のものもそれはそれでいい。真鍮製の〈FUTAGAMI〉と〈フローム〉の革石は、使うごとに馴染んでくる風合いも楽しめる。後者は作り手のシオダユウヤさんによると、中身の石の形状に合わせて革を密着させるのがとにかく難しく、納得の仕上がりに辿り着くまでに時間を要したそう。元は「紙をその場に固定するため」だけの道具。にもかかわらず、しっかりモノとして細部までこだわる。ペーパーウェイトこそ「マイナーリーガーズ」のエースだ。
〈二上〉の真鍮製の文鎮/富山県で1897年に創業した真鍮の鋳物メーカー〈二上〉の技術が生かされたクラシックな一品。空気と酸化することで少しずつ深みを増し、緑がかったような枯れた表情に育っていく。クルミと同じくらいの小ぶりなサイズだけど、想像以上にずっしりと重い。形は写真の四角、三角、菱形の3種類。¥4,587(二上☎️0766・23・8531)
〈フローム〉の革石/東京を拠点とするクラフトプロジェクト〈フローム〉のアートピースは、その技術がスゴイ。革の可塑性を利用して成形する「絞り」と呼ばれる技法で手間暇かけて革を密着させている。色は黒と生成の2色展開。¥23,100(FROME)
記録媒体が進化した現代においても、自分にとって大切な日々のことを残しておくには、紙で残す方がきっといい。そのときには、マイナーリーガーだった彼らが再び表舞台で活躍するかもしれない。まあ今では部屋に吹き抜ける風はエアコンのそれくらいかもしれないけど。
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