カルチャー
眼鏡のアイコンを持つ。
大人へのファーストステップ。
2025年9月7日
素敵な大人は、眼鏡を自分らしく掛けこなしている。
個性ある9人のスタイルから、その選び方を読み解いてみよう。
年齢を重ねるごとに、眼鏡は身近な道具になる。それは視力矯正の器具としてでもあるし、経験の刻まれた顔にこそ馴染むアクセサリーとしての側面もある。ともあれ第一印象を左右するものだからこそ、自分を象徴する一本を持つことは、大人の嗜みとも言えそうだ。では、どう選ぶか? 『Optic Salon 緑青』の宮川さんによれば、時代を彩った寵児たちの選択は、その手助けになるという。曰く、「目指すスタイルに合わせて背伸びして選んでみることで、それに似合う大人になっていく」。そう言われると、形から入るのも悪くない。まずはこの9人を参考に、自分の一本を探してみよう。
1. JAMES DEAN/WELLINGTON
『理由なき反抗』で知られるジェームズ・ディーンが愛したのは、〈シャディ〉や〈タートオプティカル〉などの米国ブランド。当時アイビーリーガーに流行したウェリントン型は、タイを緩めたジャケットスタイルをはじめとする、ルールにおもねらない彼のファッションを引き締めている。
2. TOM SACHS/CLEAR FRAME
包装紙やゴミなどを用いてアート作品を作り、スタジオの外でもワークウェアを身に纏うトム・サックス。彼がクリアフレームをかけると、まるで工場で使うセーフティゴーグルのようなチープさと武骨さが顔を出す。透明のフレームが本来持つ爽やかさを感じさせないのが、彼のオリジナリティ。
3. RYUICHI SAKAMOTO/BEKKO FRAME
後年の坂本龍一を印象付ける、フランスの天才デザイナー、ジャック・デュランによる鼈甲色フレーム。イエローベースの鼈甲は魯山人など昔の芸術家に多い眼鏡で、日本人の肌に馴染む色でもある。モノトーンの服とロマンスグレーの髪も相まって、音楽家らしい知性や創造性を感じさせる。
4. RIVERS CUOMO/NARROW WELLINGTON
Weezerのリヴァース・クオモには、肩に力の入らない自然体の洒脱さがある。天地の浅い横長のウェリントンは、場合によっては野暮ったくもなるが、それでもスマートに見えるのは、彼自身の持つナードなスタイリングとマッチしているから。トレンドの逆をあえて行く反骨精神が見て取れる。
5. DAVID HOCKNEY/BIG-SIZE ROUND FRAME
ウォーホルやキース・ヘリングなど、アーティストのチョイスは一癖あり。若き日のホックニーの場合、オーバーサイズの丸眼鏡。髪をブロンドに染めていたことを考えると、これも芸術家としての演出だったはず。ヴィヴィッドカラーのボーダーとの組み合わせも、キャラ立ちに一役買っている。
6. 2PAC/METAL FRAME
JAY-Zやカニエが掛けた〈カルティエ〉の「GIVERNY」、2PACが着用した〈ジャン ポール ゴルチエ〉の「55-3175」など、ラッパーとメゾンブランドの眼鏡には蜜月の関係が。目元に光る金属の輝きは、富や知性のアピールなのだろう。装飾の少なさゆえ、ストリートファッションとも好相性。
7. DAVID BOWIE/2BRIDGE FRAME
空軍のパイロット用として、ヘルメットに触れても壊れない耐久性を実現するため、レンズを繋ぐブリッジを2本にした「2ブリッジ」。ミリタリー由来ゆえ、ダンディズムを強く感じる一本だが、中性的でアバンギャルドなデヴィッド・ボウイのスタイルと組み合わさると、グッと色気が増す。
8. YVES SAINT LAURENT/RECTANGLE FRAME
時代によって掛ける眼鏡が替わるイヴ・サンローランだが、フランスのオートクチュール眼鏡の頂点〈メゾンボネ〉の細長いレクタングルはとりわけ印象的。“モードの帝王”たる彼が、あえてゴーグルのようなスポーティなこのモデルを持ってくるところに、人並外れたセンスが表れている。
9. WIM WENDERS/COLOR FRAME
ヴィム・ヴェンダースが好むのは、鮮やかなブルーフレーム。ともすればユーモラスになりすぎるところを、同色のシャツと合わせたり、モノトーンの服の外しに使うことでチャーミングに魅せているのは、映画監督で写真家でもある彼の色彩感覚ゆえ。色付きレンズなら僕らも取り入れやすい。
プロフィール

宮川佑介 『Optic Salon 緑青』代表
みやがわ・ゆうすけ|『金子眼鏡店』『CONVEX』で勤務後、デザイナーの経験も経て独立。個性豊かな欧州ブランドをはじめ、1940〜’90年代のヴィンテージフレームもストックする。
Instagram
https://www.instagram.com/opt.rokusho/
Official Website
https://opt-rokusho.com/