TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#2】お酒と音楽②

執筆:マダムギター長見順

2025年5月20日

物心ついた頃から、「酒飲み人生になることは間違いない」などと確信しておりましたが、「音楽で人前に立ちステージをやる」という人生になったことは想定外でした。

ブルースセッションとやらを初めてやったのは20代半ばだったかな。『Jirokichi』というライブハウス、カウンターで自分の名前を書き、ひたすら自分の名前が呼ばれるのを待つわけです、店の方が一夜限りのバンドメンバーを決めていきなり呼び出されるわけです。当時はギターやらサックスやら楽器抱えた方が100人近く来てたかなあ。セッションなどやったことないし友人もいないしひたすら飲むしかなかったわけで。人前でぶっつけ本番なんてやったことないし。

……バーボンのボトルをください。
飲めども飲めども酔わない。アタマ痛いような気はするが酔えない。ドキドキ感は消えるどころか心臓は高鳴るばかり。
で、帰ることにした。敗退というやつだ。

翌月、再度セッションしに行った。人前でギター弾いた。ブルースギター弾いてウケた、拍手もらった、友だちっぽい人ができつつあった。また翌月も行った、また行った、すっかり常連になった。恐れを知らぬギタースタイルからか、いつしか“竜巻のお順”と噂されるようになった。

時は流れたが、今もギターを弾いて楽しいのはあの頃と変わらない。
変わったのは酒の量。あの頃に比べると、今は赤ちゃんがホッピー舐めるくらいなもんだ。
それにペース配分とやらを考えるようになった。気がつくと吐かなくなっていた。少量のアルコール(ま、自分にとってですが)でステージに立ってお客さまに拍手をいただく、、、ずいぶんと成長したもんだと思う反面、あの頃のヘタクソヤケクソギターが恋しい。勢いがあって凄かったんだ、わたしのギター。今ももちろん音楽最高に楽しいのだがなにかが違う、あの頃と。

そりゃそうだ。
嫌なこと都合の悪いことは忘れているのだ。
酒ですべてが勝手にいい記憶になっているだけなのだ。
どえらい飲んで夢の中にいたのだ。
これこそ音楽って思う。
独りよがりで、幻で、儚くて、一瞬一瞬消えてゆく……

あれ?
これって酒のことではないか。

今夜も飲んでいる。
わたしは今が最高に楽しいのです。

5月は山つつじ。毎年増えるように笹刈りするのが日課です。これから30年の楽しみ。

プロフィール

マダムギター長見順

1962年、東京都生まれ。マダムギターとは、あたくし長見順のこと。ギタリストとして黒人(アフロアメリカン)のバックを務めながら数々のマダムソングを作曲し、その理論を超越したギタープレイと、妄想を暴走させた歌詞が観客の絶賛を浴びる。代表曲は、OYAZI、暴走族のボレロ、加藤さんのテーマ、しわよせの世界など。2025年春から〈P-VINE RECORDS〉より、8枚目となるソロCDアルバム「クイ~ン オブ ルーズ(いいかげんなチョ~キング)」発売。

Official Website
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