TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#3】太陽とオフィスワーカーの関係。
執筆:Atelier HOKO
2025年4月26日
一般的に、ほとんどの人間は、自然光が住空間に流れ込むことを好むと言ってよいであろう。特に厳しい真冬の時期には、それは心地よいものである。熱帯気候においては訪れない感覚ではあるが(率直に言えば、まったく求めていないけれど)、我たちにも、日差しが室内をさまざまに劇的に横切っていくのを迎え入れたいという欲求がある。一見、浅はかな考えに聞こえるかもしれないが、それは原始的な人間の欲求なのかもしれない(単に映画でよく見るイメージである可能性もあるが)。
自然光が室内に差し込むとき、埃をかぶった置物、並んだ本、壊れた定規など、普段は目立たないものたちが、注意を引くように目覚める。太陽が移動するまで、あるいは雲が光を遮るまでに。
私たちは10年ほど前に建てられた住宅用の建物をオフィスとして使用しているが、すべての部屋にとても大きな窓が備えられている。これは、30年前までのシンガポールにおけるほとんどのアパートでは珍しいことであった。晴天の午後の太陽の熱だけで、信仰心のない者さえも改心させるほどの国において、この不快感を窓のせいにしないというのは不思議なことだ。それどころか、床から天井までの窓の人気は高まり続け、しばしばラグジュアリーなものとして宣伝されている。
ほとんどのアパートが、エアコンによってもたらされる驚くべき涼しさに大きく依存していることを思えば、それも理解できる流れである。中には、24時間365日エアコンをつけっぱなしにしている者さえいる。そのような人々は、部屋の中を回り続けるひんやりとした空気の中で、顔に太陽光を浴びながら温かいお茶をすすり、額にほとんど汗をかくこともなく、毎月の電気代の請求書を受け取るまでの間、その時間を楽しんでいる。
もしかすると、私たちは太陽とその圧倒的な存在感にあまりにも慣れてしまったがゆえに、自力で抵抗しようとする努力を放棄してしまったのかもしれない。その代わりに、人工の建造物や技術、装置といった人為的な手段に頼って、さまざまな方法で太陽の力をかわそうとしている。屋内では、我々は太陽を「忘れる」ようになっている。せいぜい、窓のかたちをした日中用の照明にすぎない。これは、さすがに問題であろう。
私たちは長年にわたり、既製のカーテン、ロールブラインド、さまざまな布地、あるいは板などを使って、差し込む光を調整・調節するために多くの方法を試みてきた。その結果、なぜしっかりとしたシステムを導入しないのかと、いろんな人々に問われることもあった。しかし、紙を刃物で切る作業から商品撮影に至るまで、オフィス内の作業によって求められる光の条件は異なるため、太陽光に応じて、板を立てかけたり、布を吊るしたり、時には帽子やバイザーを室内で着用したりと、常に調整と対応を行っている。
このような太陽光との付き合い方は、ひどく非効率的で雑然として見えるし、滑稽にすら思えるかもしれないが、これらの行為を太陽との継続的かつ直接的な関わりと捉えることもできる。あらかじめ設置されたカーテンやブラインドに部屋の明るさを委ねるのではなく、流れ込む光を調整するために身近な素材を即興的に用い、そのたびに微細な調整を行うことで、自らの快適さを自分の手で掌握している。
太陽とともに生きることは確かに不便であるが、それはおそらく、太陽の存在を認め続けるための一つの手段なのではないだろうか。あまりにも屋内での生活に慣れてしまった私たちの身体は、近年、その存在にさほどの注意を払わなくなっている。
プロフィール
Atelier HOKO
あとりえ・ほこ|アルヴィン・ホーとクララ・コウによる、シンガポールのインディペンデントリサーチプラクティス。彼らが発行する雑誌「Science of the Secondary (取るに足らない科学)」には、毎号日常生活の中にある、あまり気に留められないモノ・コトが毎号ひとつ取り上げられ、様々な視点から探求したことがまとめられている。
Official Website
https://atelierhoko.com/
Instagram
https://www.instagram.com/atelierhoko/
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