TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#2】マイ先生、ジェローム・ワーグさん
執筆:向井知(『CIMI restorant』シェフ)
2025年4月16日
私は、ジェロームが日本に移住して、最初に開いたレストラン『the Blind Donkey』のオープニングから、『CIMI restorant』(チミ・レストラン 以下、CIMI)がスタートするまでずっと、彼のもとで料理を作ってきました。
絶妙な塩加減と味付け、「なるほどぉ!」と驚きのある食材の組み合わせ。ものすごくシンプルなのだけど、真似しようとしても「なんか違うなぁ」となってしまう、自然で美しい盛り付け。その動きを観察していると、ゆったりしているように見えて、仕込みもササッと終わらせてしまう。そして、なにより食べることが大好きで、隙を見つけてはつまみ食いをしている食いしん坊っぷり。
ジェロームのような料理が作れるようになりたくて、その動きを観察し、その脇で味見しては自分の作る料理との違いを考えてきました。
『the Blind Donkey』で働く以前にも、飲食店で働いていましたが、野菜は八百屋さんから仕入れるので、季節問わずに1年中なんでも仕入れられるものだと思っていました。
だけど、ジェロームの仕入れ方法は違いました。八百屋さんを介さずに、農家さんから直接、今一番の旬の食材を購入させてもらいます。そうして初めて、食材には季節ごとに旬があること。その味わいが、これまで食べていたものよりずっとおいしいこと。その喜びを知りました。
どんなお料理を作るかは、生産者さんとのやり取りを通して、今ある食材から考えます。
こんなに素晴らしい食材を届けてくださる生産者さんがいてこそ、私たちの料理は成り立つんだということを、この仕入れから学びました。
私たちがいつも仕入れさせてもらっている生産者さんは、環境のこともケアしながらオーガニックで作られている小さい規模の方がほとんど。今は、気候変動で天候被害も受けやすくて、オーダーしたものが「やっぱり用意できなかった…」ということも多々あります。
私も初めのうちは、そんな状況になると「予定していたメニューが作れない」と焦っていたのですが、ジェロームは決してそこにとらわれることはなく「別のメニューにしよう」と、ある素材の中で、なにができるかを考えようとします。
よくよく考えれば、食材も自然の中で育まれ、季節や気候によって、味も形も、佇まいも変わってくるのは当然のこと。特に農家さんとやり取りをしていると、自然環境の変化が感じ取れるようになって、「この味の、この形のものじゃなきゃだめ」と、完璧を求めることがとても不自然に感じるようになりました。
日々、変化する食材を、毎回自分の口で確かめながら、いかにその食材にとってのベストな形で食べる人に届けるのか。食材に対しての思いや料理の仕方は、ジェロームから学んだことがベースとなって、CIMIにも活かされています。
今日は、CIMIのコースで始めにお出しする、野菜・豆・穀物を使ったプラントベースの3皿の食材についても少しご紹介します。
野菜は、『the Blind Donkey』の頃からお付き合いのある生産者さん、CIMIを通じて出会った生産者さんから送っていただいたもの。誰々さんのニンジン、誰々さんのトマトなど、同じ野菜でも、季節や場所、作る人によって味わいが際立っていて、佇まいさえも違っている。そんな野菜たちの個性がわかってくると、すごくおもしろいし楽しいです。
そして、4月は待ちに待った山菜がシーズンイン!
昨年のCIMIのオープンから、山形県月山をフィールドに山菜やキノコなどを採集されている『日知舎』さんから、今年も山菜が届き始めています。一番初めの春の知らせはフキノトウ。ほのかな苦味がたまらなくおいしい……! いつも送ってくれる時に、山の様子を書いたお手紙を添えてくれる日知舎さん。山の豊かさをひしひしと感じます。
最近、その奥深く滋味深い沼のような豆の世界にハマって、あれこれ研究中の豆料理から自信作の一つ、「緑豆と里芋のフリット」に「フキノトウのフリット」を合わせ、ビーツのチャツネを添えました。
CIMIではお米以外にも、きび、あわなどの雑穀や、蕎麦粉、黒米などを使っています。
なかでも雑穀は今まであまり使ってこなかったのですが、なぜ雑穀を使っているかというと、すごく栄養価が豊富で、降雨量が少ない環境や肥沃でない土壌でも育てやすいものが多いんです。CIMIでは、これからより気候変動の影響を受けそうなお米の代わりにもなってくれる大事な食材になるのではと考えています。
CIMIがオープンする前に、徳島県の祖谷という地域にジェロームと訪ねました。この地域は農業文化遺産に指定されていて、歩くのが難しいくらいの傾斜地なんですが、みなさん景観を守る目的もあって雑穀を育てていらっしゃいました。
祖谷のこきびは、CIMIの定番料理の一つ。トウモロコシ粉を水や出汁で練り上げるイタリア料理「ポレンタ」にも似ていて、水で煮るとトロトロに。これを、その時季の食材と合わせてお出ししています。ほかにも、粟(アワ)をクスクスのように使って料理したりと、雑穀の可能性も探求中です!
プロフィール
向井知
むかい・とも|大阪府生まれ。茨城県にある環境NPOで勤務したのち、東日本大震災でのボランティア活動を機に飲食の世界へ。〈DEAN & DELUCA〉をはじめ、複数の飲食店を経て、自身が大きく影響を受けた〈シェ・パニース〉でのインターンが叶う。帰国後、ジェローム・ワーグと出会い、〈theBlindDonkey〉の立ち上げから参加。「RichSoil & Co.」の新プロジェクトとしてオープンした『CIMI restorant』のシェフを務めている。
CIMI restorant Website
https://cimi.jp
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