TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#1】「地味」で「滋味」、じわじわおいしく元気になるレストランです!

執筆:向井知(『CIMI restorant』シェフ)

2025年4月9日

photo: Manami Takahashi

こんにちは! 東京・代々木にある『CIMI restorant』(チミ・レストラン)で料理を作っている向井知です。
『CIMI restorant』は、清澄白河にある『the Blind donkey』の姉妹店として、昨年3月にオープンしました。どちらも、カリフォルニアで50年以上続くオーガニック・レストラン『Chez Panisse』のヘッド・シェフを務めたジェローム・ワーグがオーナーのレストランです。

つい先日、1周年を迎えたばかりの私たち。
「地球も人も一緒に健康になっていくために、どんな食材をどう料理してゆけばいいか」を考えていくレストランであり、プロジェクトでもあるCIMIについて。そして、CIMIが思うおいしさについて、4回にわたってお届けできたらと思っています!

まずはじめに、〈CIMI restorant〉の名前の由来について。

そして”restorant”。早々にスペルミス?と気づいた方もいるかも知れませんが、これはジェロームが意図的に名付けました。
もともと“restaurant”という言葉は、フランス語の「restaurer」(元気を取り戻す)に由来しているそうで、18世紀のパリでブーランジェという料理人が、人々の身体を養うための薬用スープを売る店を始めたことから生まれた言葉だと伝えられてきました。

そして、英語の“restore”という言葉もまた、回復という意味を持っているので、「回復」を強調するために、あえてスペルを「au」ではなく「o」に変えて「restorant」としました。ジェロームは、「英語圏なら『THE RESTORANT』だけで意味が伝わるんだけどな」と言っていて、それもかっこいいなと思ったけれど、結果日本らしい意味も携えた〈CIMI restorant〉が、私はすごく気に入っています。

「地球と人が一緒に健康になれる料理」ってどんな料理?って聞かれることがあります。

ひと口に というと、地球環境に配慮してつくられた食材の味わいを引き立てる料理です。ジェロームは、オーガニック食材の味わいについて話すときに、よく「テロワール」という言葉を使います。
テロワールとは、フランスのワイン醸造から生まれた言葉で、ブドウが栽培された土地の気候・土壌・地形が、そのワインの味わいを決めるという考え方。ブドウに限らず、農薬や化学肥料に頼らずに育てられた農作物には、このテロワールがしっかりと表れています。

私は、ジェロームの下で料理を学ぶようになって、「同じ野菜でもこんなに個性が違うんだ!」ってことを知りました。
CIMIでは、生産者の方たちがテロワールを生かして、地球をいたわりながら育ててくれた野菜たちをもとに料理をしたプラントベースの3皿と、この3皿に、鹿肉や牡蠣など環境課題を解決する役割を担った食材(これは他の回でお話ししますね!)を料理した2皿を加えた2つのコースを提供しています。

photo: Tetsuya Ito

ちなみに、CIMIは、ドーナツ&グロッサリーストア『FarmMart & Friends』の夜の時間を借りて営業してます。
そしてお隣は薪火でパンを焼く『パン屋塩見』。
CIMIでも『パン屋塩見』のカンパーニュをお出ししてます! たまに『パン屋塩見』のパンを焼いたあとの窯の余熱で料理させてもらうこともあります。

代々木の住宅街の真ん中に突如現れる蔦に囲まれた建物が目印。
ここにはたくさんの“おいしい”が集結してます!

プロフィール

向井知

むかい・とも|大阪府生まれ。茨城県にある環境NPOで勤務したのち、東日本大震災でのボランティア活動を機に飲食の世界へ。〈DEAN & DELUCA〉をはじめ、複数の飲食店を経て、自身が大きく影響を受けた〈シェ・パニース〉でのインターンが叶う。帰国後、ジェローム・ワーグと出会い、〈theBlindDonkey〉の立ち上げから参加。「RichSoil & Co.」の新プロジェクトとしてオープンした『CIMI restorant』のシェフを務めている。

CIMI restorant Website
https://cimi.jp

Instagram
https://www.instagram.com/cimi_restorant/