TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#2】ヘニャパ族と暮らした話①

執筆:加藤紀子

2024年12月21日

 25年ほど前「世界ウルルン滞在記」のロケにお誘いいただいた時に(俳優やモデル、タレントさんが海外でのホームステイを通じて文化などを体験する人気の番組がありました)、「どんなことがしたい?」と聞かれ、これまでの旅行ではヘボヘボ英語でのやりとりでなんとか成立していたけど、「双方に共通の言語がない場合、どうコミュニケーションが取れるのか気になります」なんてことをお話ししたら数週間後、どこに行くとも知らされず(下調べをさせないウルルンスタイル)、数回のトランジットで到着したのは、ベネズエラの首都カラカスからヘリコプターで1時間ほど飛んだ、小さな集落。

 着陸直前、窓を覗くとヘリコプターを見て睨む人逃げる人隠れる人。間違いなく「ウェルカムではなさそうな気配」を感じていたものの、着陸直後から番組スタッフやコーディネーターさんが村長への説明を頑張ってくれた甲斐あって協力してもらえることに。そして村民の真ん中で「日本から来た紀子です、少しの間皆さんの仲間に入れてください」とホームステイをさせて欲しい旨を伝え(このフレーズだけ通訳さんが助けてくれました)、村民会議の結果、若いご夫婦のお家に無事、受け入れていただけることになりました。

 ようやくここで周りの景色を見ると、人々は腰に布を巻いただけのシンプルスタイル、もちろん素足。土壁と葉で作られた家の中には冷蔵庫やテレビ、電話などあるはずはなくハンモックがただ一つ。肝心の言語はというと、カタカナで「チピ」とか「プヒ」みたいな短い単語で会話を交わしているような印象。当然その言葉に頷けるフレーズがある訳がなく、念願の“言葉が通じない人たちとの暮らし”がスタートしたことにワクワクとドキドキが心から湧いてきました。

 初日の夕方、村の人たちが集まる場所へ行ってみると、火を起こす女性達のすぐそばの川に男性達の姿が。「ここに魚いるの?」と、日本語と英語で尋ねてみるも当然のキョトン。指で土に魚を描くと「ああ、いるよ」の表情をもらえたので次に「ここに入る?」と聞けば「うん!」と答えるとともに、次々に茶色い色の川へダイブ。あまりに気持ちよさそうな顔をしているので、裸にはなれなかったけれど洋服のまま恐る恐る入ってみると、思わず「気持ちいいー!」の声が出てしまうほど。その表情を見たみんながようやく笑顔を見せてくれ、到着してからの緊張がほぐれた瞬間となりました。

 まだまだ長くなりそうなので、続きはまた来週ー!

ヘニャパ時代の写真がないので、こちらアマゾンの民“シクリン族”と過ごした写真を。成人の儀式として男の子は猛毒を持ったスズメバチの巣を素手で叩き割る儀式があるらしく、母親は彼らの痛みを分かち合うため、自らの頭を刀で傷付けるんだそう。写真は儀式前のお母さんと赤ちゃん。実際の儀式にも立ち会いましたが、成人って言っても少年達が巣に挑む姿は、見るだけでも痛みが……。

プロフィール

加藤紀子

かとう・のりこ|タレント。1973年、三重県生まれ。1992年に歌手デビュー後、CM、ドラマ、バラエティ、執筆活動の傍ら、ライフワークとして都内での野菜作り、また「お豆腐親善大使」を務めるなど食に関する興味が多岐にわたる。オフィシャルブログ「加藤によだれ」では日々の出来事を発信している。TBS「ふるさとの未来」レギュラー出演中(毎週水曜24:58~)

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