TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#2】Loco Islandでハワイへ

執筆:二名敦子

2024年11月22日

さて今回は 84年に発売された私のアルバム「Loco Island」にまつわる話を。
アルバムコンセプトは「聞いていたらハワイに行きたくなっちゃう!」

制作作業はスタジオではなくハワイのロケハンから始まりました。
メンバーは4人。作詞家の三浦徳子さん、私、レコード会社のM氏、S氏。
地図を片手に ハワイの3島をレンタカーで走りまくり。
タイトなスケジュール なかなか厳しい旅でした。

一旦帰国後、佐藤博さん、高中正義さん、安部恭弘さん、 村田和人さん、櫻井哲夫さん、いろんな方に楽曲提供していただき、歌詞は徳子さんと私が担当。
楽曲の準備万端、もう1度ホノルルへ!

レコーディング前日、メンバーの一人Henry Kaponoさんと顔合わせすることになり 
自分の曲のベースを弾きに来てくれた櫻井哲夫さんとディレクターのM氏、私の3人で待ち合わせ場所であるホテルのロビーに。ところが、M氏が突然、
「あ、用事があるから、俺ちょっと抜けるね〜」
残された櫻井さんと私。インターネットもない時代、失礼ながらHenry Kaponoさんのお顔もよくわかりません。
広いホテルのロビー、行き交う人の数も多く、どないせいっちゅうねん。
途方に暮れた数十分後、「あ、あの人じゃない?」と櫻井さんが一人のロコを指す。
一人颯爽と歩く 吊り目型のミラーサングラスに 背中まで伸ばした癖っ毛の黒髪、長身、一粒ダイアモンドのピアスがギラリと眩しい、褐色の男性。
「いや、違うんじゃない」 
「でも、ほら」
櫻井さんの視線の先には 彼が抱えていた小ぶりのギターケース。
戸惑う私を尻目に人混みを縫って彼にサクッと声をかけた櫻井さん、
その男性はHenryさんその人だったのです。
顔もわからない同志の待ち合わせ。人も多い広い場所でよく会えたものだと思います。
ギターケースと櫻井さんのおかげ。適当な感じが80年代っぽいとも言えますね。

落ち着いた雰囲気、ダウンタウンにあるStudio Hawaii D.j.Prattさんと。

翌日、ダウンタウンに佇むStudio Hawaiiでレコーデイングが始まりました。
メンバーはハワイから、カラパナのD.J.Pratt(G,Cho)さん、Gayload Holomalia(Key,Cho)さん、セシリオ & カポノからHenry Kapono(G,Cho,Vo)さん、Jay Mariana(Bass)さん、Alvin Fejarang (Drums)さん。
そして日本から サウンドプロデューサー佐藤博(Key)さん,櫻井哲夫(Bass)さん。

D.J.さん

櫻井さん

ヘンリーさん

2011年に復活した頃、時々ライブでご一緒した山本圭右(G)さんが
「ニイナの曲、難しいぞ。」 【俺は弾けるが】←私の勝手な妄想による圭ちゃんの心の声 と言っていました。
最近、Harvest Songs というユニットで一緒に演ってるMac清水(Per)さんも
「アレンジャーだれっだったの?複雑だよね〜ニイナさんの曲〜。」【オイラは余裕だけどね】←心の声、私見です と。
そう、フュージョン全盛期に作られた私のアルバムは演奏のアレンジ、コード進行が凝っているのです。
そこで、今回は佐藤博さんと櫻井さんが先生となり、手取り足取り楽器取り。
櫻井さんが自分のパートを録音し帰国した後は 博さんが一人、流暢な英語でメンバーに譜割や曲の進行をゆっくり丁寧に説明されていました。
私は楽器の練習の間、延々と仮歌を歌いましたよ。
学生バンド出身なので、何回も同じ曲を歌うのは苦じゃないんです。
小柄な博さんに教わる大きなロコボーイたち、次何言われるんだろう、指示待ちの姿を思い出すと今でも胸がキュンとします。あら不整脈かしら。

渋谷公会堂 Loco Island 発売後 レコーディングメンバーとカマサミコングさんで 神奈川、東京、大阪を回りました。

みんなの頑張りでなんとか予定していた10曲の演奏部分を録り終え
次はコーラス録り。
メンバーはD.J.Prattさん、Gayload Holomaliaさん、Henry Kaponoさん
演奏とは違い 細かいフレーズもなく みんなの表情も明るいです。
伸びやかな歌声は3人とは思えない倍音、素晴らしいものでした。
ロスとは違う どこか切なさを纏った、これぞハワイのAORなコーラス。
アルバムの大きな魅力の一つになっています。

さて、いつも穏やかな笑顔をたやさず丁寧にのんびりハワイタイムに寄り添っていた博さん。
帰国後、ご自分が作曲された曲のオーバーダビングをするため中野のサウンドスタジオに入るや否や
「さーやるよ、やるよ!!」
水を得た魚のように シンセサイザーをケースからひっぱり出しす手も荒々しく
ハワイの3倍速で話し 10倍速で録音を終えたのでした。はやっ

たくさんの出会いを生み、たくさんの想いを載せたアルバム、「Loco Island」
そうそう、LPに入っている4ページフルカラーの豪華インサートは 当時、ポパイのエディターだったグーフィ森さんが担当しています。

近くでライブだったコイタさんと 圭右さんがHarvest Songsのリハーサルに寄ってくれた時の写真。 左から 清水興さん(B) 小板橋 博司さん(Per) 山本圭右さん(Vo,G) 私 H.Uさん(Vo,G) Mac清水さん(Per) 2023年4月

プロフィール

二名敦子

にいな・あつこ|1959年大阪府生まれ。1979年に早川英梨名義で、シングル「誘われて夏」や、アルバム「CITY」をリリース。1983年にアーティスト名を二名敦子にし、アルバム「PLAY ROOM~戯れ」でテイチクからデビュー。代表曲に「オレンジバスケット」、アルバム『LOCO ISLAND』など。夏のリゾートを思わせる曲が多く、パブロクルーズや、ヘンリーカポノなど海外の有名サーフロックミュージシャンとの曲作りにも積極的だった。1986年に引退したが、2011年に復帰。ライブ活動を行う。