TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#3】里山再生と生活。

執筆:井上隆太郎

2024年11月25日

こんにちは。苗目井上です。農家です。

前回苗目の栽培と採取について書きましたが、今回は私たちが採取をしている里山について。

私たちは鴨川に移住してからまず農場(畑)より先にこの里山に出会いました。

最近では聞くようになってきた耕作放棄地という問題、担い手不足、高齢化、他にも山ほど理由はありますが、耕作しなくなり放置された畑のことです。
私たちは耕作放棄地を減らしたい!!! というVISIONのもと、様々な形で農業を行っています。

が、この耕作放棄地と同じくらい、もしかしたらそれ以上にあるのかもしれない、人が手を入れなくなった里山。

この里山という言葉のイメージとしては、家や学校の裏山のような、人が生活する里と、動物たちが暮らす山奥をつなぐ中間点のような場所。
昔はこの場所にも生業がありました。炭焼きや山菜採り、山の中に柑橘の畑や田んぼがあったような場所もありました。

そんな’荒れた里山’を再生したい、里山から価値のあるものを見出したい、美しい場所にしたい、と考え環境再生に取り組み始めました。

2回目にも書きましたが、里山には食べられたり、いい香りがしたり、美しかったり、素晴らしい植物がたくさんあります。そんな植物が健全に育ち、流通して、美しくて安全で、仕事にもなる、そんな里山を目指しています。

まず最初に始めたのがもちろん草刈り。その後に間伐を行いました。50年前に国策で植樹された杉が30mを超え、いまが切りどきのはずが、輸入建材が増え、林業者は減り、木を切らないまま放置されているのが現状で、この杉の木が里山を暗くし、水捌けを悪くし、広葉樹や下草の生育を阻害しているのです。

そのため、ログビルダーであり木こり、そして一級建築士という他にはいない友人の指導のもとチェーンソー技術を習得し間伐を開始。同時に水道を作り、光の入り方や風の抜け方を考え環境再生を進めています。

そもそも、里山からの採取をするため、採取しやすい里山にするために始めたこの作業も、頭で想像するのといざ始めるのでは大きく違い、重機も入れない山の中で伐倒した大量の杉。

当初は薪にするか、なんて考えていましたがそんな量ではないことに気が付きました(計画的なんだか無計画なんだかわからないけれど)。

そしてその杉達にはもちろん罪はない。ちゃんと使わねばならないという思いが沸々と湧き出し、家を作ることにしました。セルフビルドで人力で、基本チェンソーで。でもしっかりとした環境に負荷の少ない住める家を建てようと……。

現在環境再生、伐木から5年の歳月を過ぎ、やっと内装工事まできています。

2025年春にはこの里山に住み始めます(当初は2022年春完成予定でしたが……)。

30年後に朽ちるかもしれないけれど最高の、おそらく世界唯一の切り出した丸太でのセルビルド A-frame house が完成します。

プロフィール

井上隆太郎

いのうえ・りゅうたろう|〈苗目〉代表。1976年、東京都生まれ。園芸商社バイヤー、パーティやイベントへの生け込み装飾や造園を経て、鴨川へ移住。その後はエディブルフラワーやハーブを無農薬・無化学肥料で栽培する傍ら、里山の再生やカフェ運営、公園の開園などの自然に近いコミュニティ作りに取り組む。

Instagram
https://www.instagram.com/naemekamogawa/

Official Website
https://naeme.farm/