TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#3】フルーツバスケット
執筆:三浦透子
2024年10月23日
私は嫌いな食べ物がありません。
なんでも食べられます。
これは紛れもなく自分の努力によるものです。
昔は好き嫌いが沢山ありました。
生もの全般、野菜全般、きのこ類、梅干し、辛いもの、ハーブにスパイス、果物も酸っぱ過ぎたり甘過ぎたりするとだめ。
食材だけでなく、
当時の自分にとって不思議な味、複雑な味のするものが食べられなかったのです。
自分にとって安全な、味が予想できるものしか食べられなかった。
でもあるとき私は決めました。
全部食べられるようになろうと。
いくらは一粒から始めました。
とにかく、嫌いなものを美味しくないなと思いながらも食べ続けました。
何度も心が折れながらも、10年程続けたと思います。
最後の敵は牡蠣でした。
日々の努力の結果、今は本当になんでも食べられるようになっています。
食べられるだけでなく、美味しいと思うことができます。
身体の健康を考えれば、そりゃあ好き嫌いはないにこしたことないとは思いますが
別にここまでやる必要はないですよ、絶対に。
嫌いなものくらいあってもいいじゃないかと思います。
でも私にはその必要があった。
何故なら私は、ロケ弁を食べなきゃいけないからだ。
中学生の頃、とにかく現場で出されるご飯が食べられなかった私。
弁当は半分以上残す。
ケータリングはお米だけいただく。
母が当時のマネージャーさんに、なんとかしてくださいと怒られていたことは、後になって知りました。
加えて私が厄介なのは、
好きな食べ物も特にないということです。
厳密に言えば、自分が食べたいものがなんなのかがいつもわからない。
人に食事に誘っていただけば、
「食べたいものはなんですか?」
「わかりません」
「食べられないものはありますか?」
「いっぱいあります」
毎度こんな状態です。
決められないから決めてもらいたいのに決めづらい。
肩身が狭くて仕方なかったです。
なんでもいいと言いたかった。
なんでもいいが一番困るとか言われてしまうけれど、
でも、本当の意味でのなんでもいい、
“どこの店でも、どの種類のご飯でも私は美味しく食べることができます”のなんでもいいならまだ許してもらえそう。
胸を張って「なんでもいい!」というべく
私は好き嫌いをなくすことに決めたのです。
給食で居残りさせられるのも辛かったし
ご飯を残す、罰当たりなやつだと思われるのも辛かった。
好き嫌いがなくなってからは本当に生きやすくなりました。
それでもランチは、いまだに人と食べにいくのが少し怖い。
ランチって、一般的とされる一人前の量が出てくるでしょう。
食べたい量を自分で選べないことがプレッシャーなのです。
調整できる部分はなるべく調整しますが、
そもそも、今自分がどれくらい食べられるか、事前に予想できない。
今日すごくお腹が空いていると思ってトンカツを頼んでみたら意外と入らない。
今日はあまり食べられなさそうとご飯少なめを注文したら、すぐにお腹が減ってコンビニに駆け込む。
これはまだ解決していない次の課題です。
ビュッフェの1ターン目でぴったり自分のお腹の求める量をとることが出来るようになる、それが目標です。
頑張ります。
プロフィール
三浦透子
みうら・とうこ|俳優、歌手。1996年、北海道生まれ。2002年、「なっちゃん」のCMでデビュー。第94回アカデミー賞の国際長編映画賞に輝いた『ドライブ・マイ・カー』では、三浦個人としても第45回日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ数々の賞を獲得するなど、国内外で注目を集める。近年の主な出演作に、主演映画『そばかす』、ドラマ『エルピス‐希望、あるいは災い‐』をはじめ、数々の作品に出演。歌手としても活躍しており、11月29日(金)には自身初となるワンマンライブ「三浦透子 at Billboard Live TOKYO 2024」が開催予定。
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