カルチャー

インド各地に由来するオールドファブリック。

僕が掘ってるセカンドハンド。

2024年9月6日

セカンドハンドでディグしない?


photo: Abhishek Khedekar
illustration: MAGDRON
edit: Hiroko Yabuki
2024年9月 929号初出

カンタの技術が生まれたのは英国統治前の時代。ステッチにルールはないが、幾何学柄なら作り手はムスリム、動物モチーフはヒンドゥー教徒であることが多いとか。「縫い手であった女性たちが、ひと針ひと針に物語を託したのさ」

 大学時代にベンガル地方発祥の刺し子・カンタキルトをアップサイクルしたジャケットを作ったんだ。それが僕のデザイナーとしての原点だし、インドの刺繍文化は今でも服作りに欠かせない大切な要素でもある。カンタはもともと家庭のハギレを縫い合わせたリサイクル布だけれど、大量生産化が進んでいるのが難点。だから僕が集めるのはその前の時代、70年以上前のものばかり。当時のステッチワークは今よりずっと精緻で職人魂に溢れているし、作り手の人生や哲学を縫い目で表現するノクシカンタや、北インドのラクナウー地方に伝わるチカン刺繍にも共通する読み解きの面白さもある。単なる素材ではなく、個人の物語を次世代に伝えるデバイスなんだ。

印西部カッチ県の遊牧民・ラバリ族に伝わるラバリ刺繍は、手の込んだミラーワークが特徴。このストールは100年前のもので、現地の織り職人からのギフト。

白のキルトをセルフで後染めし、ガンジーの独立運動のシンボルでもあったチャルカ(糸車)モチーフを木版で。

仕事場のあちこちに布が無造作に置かれている。

プロフィール

インド各地に由来するオールドファブリック。

Kartik Kumra

〈Kartik Research〉クリエイティブディレクター

カルティック・クムラ|2000年、ニューデリー生まれ。2020年にブランドをローンチ。今春ニューデリーに路面店がオープン、6月にはパリ・ファッションウィークで初のランウェイを実施した。来年NY進出予定。

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