カルチャー

世界各地で買い集めたテープ。

僕が掘ってるセカンドハンド。

2024年9月7日

セカンドハンドでディグしない?


photo: Takeshi Matsumi
illustration: MAGDRON
coordination: Shimpei Nakagawa
2024年9月 929号初出

アトリエのメインルームにある棚、通称「テープライブラリー」には制作に使うものもあればアーカイブとして保管するものも。タイプで分類し、いわゆるトム・サックスフォントで書かれたラベルが貼られている。まさに図書館だ。

 すべての買い物に関していえることだけど、基本的に僕はヴィンテージやセカンドハンドといった概念があまり好きではない。誰かが着ていい感じの風合いが出た古着を買うという行為に魅力を感じないし、誰かの汗と努力にお金を払うって何か違う気がするからだ。ただ、そんな考えをもつ僕でも、ことテープに限っては古いものにこだわりたい。それは、今販売されているものよりも、かつて作られていたもののほうが、単純にクオリティが高いのだから。想像はつくだろうと思うけど、粘着力もあるから中古のテープは基本的に販売されていない。だから、かつて世界各地で買い集めたデッドストックが中心にはなるのだけど、唯一持っているのが1950年代のスコッチテープ。僕のアトリエの中心にある「テープライブラリー」に大切に保管しているよ。これを使うことはないけれど、テープという存在への敬意を込めたアーカイブとして持っておきたくて。他のコレクションは制作用に買い集めていたのだけど、気づけばこんな数になっていた(笑)。そもそも、物心ついた頃から自分の手を使って何かを作るのが好きだったんだけど、刃物やステープレスは危ないから、最初に触らせてもらった道具がスコッチテープだった。何かを作るにせよ、何かを直すにせよ、人が生まれて最初と最後にものづくりに使う道具はきっとスコッチテープだと思う。あまり強度はないが、誰でも手軽にしかもすぐに接着できるテープは最強のツールだし、すごい存在だと思わないか?

その語源を辿れば、粘着性がなくても、テープはテープさ。フィルムも同じくね。

1950年代からこのデザインは変わらず。その潔さと佇まいにグッとくるよね。

コレクションはスコッチテープ以外にも多岐にわたる。ダクトテープやVHBテープなど、様々な強度や色柄のテープが積み上げられた状態で棚に収められ、カラフルで彼のアートのようでもある。’90年代に日本で買ったというキャラクターテープもあり「僕が持っているテープの中で最もレアだと思うよ(笑)」

プロフィール

世界各地で買い集めたテープ。

TOM SACHS

アーティスト

トム・サックス|1966年、NY生まれ。ベニントン大学卒業後、建築家フランク・ゲーリーの下で家具製作に携わる。’90年代より資本主義社会のアイコンを用いた作品制作を開始。日本では必ずホームセンターに寄るとか。

Instagram
https://www.instagram.com/tomsachs/

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