カルチャー

【#4】スポーツ写真家脳内日誌

2021年5月31日

表彰式でもない限り被写体とのコミュニケーションは皆無であるスポーツ報道写真。いきなり余談だが、表彰や会見では目線をもらうために『こちらお願いしま〜す』とか言ったり、手を振ったり、時には目ヂカラやテレパシーを送ることもある。僕は好きではないが、報道は目線とメダル好きが多い。

話を戻して、試合中のアスリートとのコミュニケーション。これは禁じられた関係。例えば、アスリートに撮ったばかりの連続写真を見せて次の演技の参考にしてもらう。こんなことは絶対NGだ。

サッカーでゴールしてるか否か、野球でアウトかセーフか、報道カメラに決定的瞬間が写ってしまってることもある。それが証拠になりジャッジが覆ることもない。

空気みたいな存在だからこそ会場内の特別な場所で写真が撮れる。

ごく稀にアスリートと知り合いに、友達になることがある。友達がアスリートとして試合に出るというパターンもあるだろう。もとは友達の友達で、その後仲良くしているアスリートが僕にもいる。

アスリートと撮り手の関係がアカの他人ではなくなってしまったら。お互いにいい影響もあれば、必ずや負の影響もある。一流は惑わさせることなく、超越してパフォーマンスするという意見もある。いや、そこは人間同士だからゼロにはならないだろうと僕は思う。知り合ってしまった以上、プラスに向いてほしい。

彼らが世界選手権やオリンピックの出場、メダル、好記録を目標にする。僕も大舞台の取材パスを取り、良き写真を撮る。立場は違えど、高め合える関係性ではないか。

まさに今、アリだナシだの雑音を聞きながらオリンピックの代表選考会だったり、調整に入っている。何年も目標に、夢にしていたものだから。

少なくとも僕は撮り手として最終調整に入っている。

アスリートのハイパフォーマンスを期待し、撮りきる。そんな夏になることを、切に願う。

プロフィール

松尾憲二郎

まつお・けんじろう|1985年 、東京都生まれ。スポーツ写真家。バックカントリースキーの撮影にあけくれ雪山を登ってきた。2014 年より『アフロスポーツ』に所属。現在は様々なスポーツを撮影している。