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【#4】ヴィラ九条山に滞在すること、それは唯一無二の経験だ。

執筆: トニー・ジュアノー(2023年度ヴィラ九条山レジデント、工芸)

2024年3月5日

Photo: Tony Jouanneau, Villa Kujoyama
text: Tony Jouanneau
translation: Tsugumi Kozuma
edit: Eri Machida

毎日、都会からその景色が一変する京都郊外の山の中を登る。入口に足を踏み入れると、森の下草の香りとヴィラの歴史を彩ってきたレジデントの名前が出迎えてくれる。このヴィラの一員になれたことがどれだけ幸せなことかを噛み締める。

 

私が日本に来たのは、日本の織物職人と対話を交わしながら、ウニの殻を用いた染色技法についての科学的調査を進めたいと思ったからである。日本での生活とは、執着を手放すことを学ぶということだと、過去のヴィラのレジデントから聞いていたので、出会いやレジデントとの交流、そして日々の生活を支えてくれる心強いヴィラのチームに身を任せることにした。このチームのおかげで、来日直後に「ニュイ・ブランシュKYOTO」の一環としてAēsopとのコラボレーションが実現し、作品を展示させてもらうに至った。これらの作品は、2024年1月19日から2月11日まで東京日仏学院で開催されていた展覧会「響き」でも展示された。

ヴィラ九条山の現館長であるアデル・フレモル氏の就任後に、彼女の提案で始まったヴィラの一般公開(毎月第一木曜日)は、私たちにとって欠かせないものだ。一般公開は、レジデントの研究過程を発表したり、親密に関わるエキスパートを招いたり、情熱を身に纏った心惹かれる人たちに出会えたりするフレンドリーな空間だ。毎月第一木曜日には、沢山のきっかけが生まれるのである。

ウニ染めの原料であり、日本ではまだ活用されていない廃棄物のウニの殻を求めて、すぐに鹿児島県の海辺へと足を運んだ。調査を進める中で、藍染、型染、泥染、絞染、引染などを手がける職人や類稀なる匠の技に触れ、熟練の職人たちとの絆を深めることができた。これは夢にも思わなかったことだ。日本の方達は、心配りや敬意を込め、驚くほど親切に私を迎えてくれた。自分も同じように恩返しできることを願うばかりだ。

レジデントとしてのヴィラ九条山での経験は、実り多い仏日間交流の始まりに過ぎない。職人達とこの色鮮やかなエコシステムをめぐるコラボレーションを続けるため、幸運にも5月に京都の地に戻ってくる予定だ。フランスでの認知を高め、新しいプロジェクトを立ち上げることも目的としている。

私の活動分野に「ビフォー・ヴィラ」が存在するのと同じように、「アフター・ヴィラ」もまた刻まれていくことだろう。

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トニー・ジュアノー

トニー・ジュアノー

デザイナー、工芸家、研究者。2017年に、アトリエ・サムビオーシス(Atelier Sumbiosis)を設立。そこは科学とテキスタイルに関するノウハウが出会う仕上げ加工の実験工房です。微細藻類を用いた染色、虫に食い尽くされるモチーフやバクテリアによる布地のプリントなど、そのリサーチの着想源となっているのは共生(シンビオーシス)の称賛に値する原則であり、命あるものと柔軟な素材との斬新なコラボレーションが目指されている。その結果生まれるエコロジカルな素材は、美術工芸家とのコラボレーションにより刺繍、プリーツ加工、製織、マーブル柄などを用いて手を加えることで、他に類のない作品を生み出す。

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ヴィラ九条山

ヴィラ九条山

フランスのヨーロッパ・外務省の文化機関で、アンスティチュ・フランセの支部の一つとして活動し、主要メセナのベタンクールシュエーラー財団とアンスティチュ・フランセパリ本部の支援を受けて運営している。アーティスト・イン・レジデンス施設として、1992年以来、400名以上の芸術家や職人を迎えており、日仏間の現代創作と芸術交流の先駆けとなる場所。毎月第一木曜日に一般公開を行っている。

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