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〈モンクレール〉とサレヘ・ベンバリー
MONCLER × Salehe Bembury
2023年8月9日
photo: Taro Hirayama
styling: Satoshi Kamei
illustration: Ryuto Miyake
text: Keisuke Kagiwada
edit: Minori Kitamura
サレヘ・ベンバリーが語る、
アウトドア体験に着想を得たコレクションへの想い。
多種多様なクリエイターとのコ・クリエイションを通して、〈モンクレール〉の新たな可能性を探求するプロジェクト「モンクレール ジーニアス」。今季、パートナーの1人に選ばれた気鋭のデザイナー、サレヘ・ベンバリーは、「リスペクトするクリエイターたちが名を連ねる名簿に、自分も参加できて光栄です」と語る。そんな彼に、今回のコレクションについていろいろ教えてもらった。
――まず、今回のプロジェクトに携わる前の話を聞かせてください。〈モンクレール〉というブランド、そして「モンクレール ジーニアス」について、どんなイメージを持っていましたか?
〈モンクレール〉のヘリテージについては、今回のプロジェクトに参加する前からよく知っていました。例えば、アウトドアにおけるユーティリティと、寒さから身を守る衣服の両方を追求しているという点などです。しかし、「モンクレール ジーニアス」に関しては、もっと高いところに位置しているように思います。クレイグ・グリーンとの協業で「ジーニアス」に親しみがわき、イベントにも何度か足を運びましたが、アイテムの完成度の高さと同時に驚かされたのは、それが置かれた場所。2つの異なる視点を持つ者たちが1つの場所で出会い、美しいプロダクトを実現させたときに、製品がどのような方向に向かうのか。それを見られるということが、「ジーニアス」の魅力だと思います。
――そんな「ジーニアス」のプロジェクトにご自身も参加されたわけですが、コレクションのテーマは“ハイク”だそうですね。アウトドアはお好きなんですか?
そうですね。アウトドアの魅力を教えてくれたのは両親でした。幼い頃はNYに住んでいたので、自然と触れ合う機会は週末や休日くらいでしたが。その後、僕と自然の距離がぐっと近付いたのは大人になり、LAに引っ越してから。今やアウトドアは僕の生活の主役になっています。自然の中で長い時間を過ごすことの魅力は、意識的にも無意識的にも強いインスピレーションを受けられること。今回のコレクションも、アウトドアの体験からかなり影響を受けているんです。
――ハイキング以外にもアウトドアを楽しむのでしょうか?
信じられないかもしれませんが、ニューヨークの血を引いているにもかかわらず、僕は釣りとともに育ちました。毎年夏になると父と釣りに行き、腕にはそのときに釣った魚の刺青が入っています。自転車も大好きで、フィスカー製の自転車に乗っています。ロサンゼルスに引っ越してからは、キャンプによく行きました。美しいキャンプ場や国立公園がたくさんあり、そこで魚を釣ったこともあります! たくさんは釣れませんでしたが、とても楽しい経験でした。
あとは、ハイキングのときに瞑想するのも大事な時間。とても忙しいので、時間があれば、心を空っぽにしたりする時間を取ることが、精神衛生を整える上で非常に有効なんです。
――アウトドアを楽しむときはどのような装いですか?
アウトドアのときの服装は、快適さと機能性を優先しています。具体的には、靴のトラクションや、ジャケットのフィット感などです。保温性はあるか? 履いたズボンは伸びるか? 靴下は乾いているか? 靴は水に強いか? 僕はアウトドアに出かける前、快適で安全であること、そしてアウトドアを成功させるために必要なすべてのリソースが揃っていることを確認するために、多くの項目をチェックするようにしているんです。LAに引っ越してきた当初は、日常的に着ているような服装でハイキングをしていましたが、すぐにトラクションや通気性、それから水分補給の重要性を知りました。今では、より充実したアウトドアライフを送れるようになり、このメッセージを広めていきたいと考えています。
――先ほど、「今回のコレクションも、アウトドアの体験からかなり影響を受けている」と語っていました。今回のコレクションの特徴でもある不思議な模様のキルティングも、自然からインスピレーションを得ているんでしょうか?
確かにそうなんですが、インスピレーションを与えてくれた環境に対してさりげなく目配せすることは重要だと思いつつも、安易に葉の模様や木の迷彩は使いたくありませんでした。そこで取り入れたのが、指紋のモチーフ。これは僕自身のブランドでも探求しているモチーフですが、あのキルティングにもそれを落とし込んでいるんです。重要なのは、至るところでさりげない目配せをすることで、その文脈が何に由来するのかについての主張を、より大きくすることでした。
――指紋だったんですね! では、カラーパレットの着想源は何だったのでしょうか。自然に馴染むアースカラーをベースに、オレンジやピンクが印象的に取り入れられていますよね。
カラーパレットについて心掛けたのは、着想源を多様にすること。そうすれば、多種多様なオーディエンスに共感してもらえるはずなので。僕は昔からアメリカ南西部の暖かい色に強くインスパイアされてきました。だけど、今回のコレクションには、それ以外にも世界中のさまざまな地域を旅する中で得た経験が、色濃く反映されているんです。
――シューズについても教えてください。デザインのベースには〈モンクレール〉の定番シューズであるTRAILGRIPを採用していますよね。ただし、シュータンやヒールのテープなどは細かく変更されているし、素材はGORE-TEXが使用されています。機能性と美しいデザインが両立しているように感じたのですが、心がけたことはありますか?
結局のところ、プロダクトづくりにおけるゴールは、バランスを取ることなんです。シューズの場合なら、履き心地がよくても、見た目が悪ければ、成功したとは言えません。逆もまた然り。その点、今回のTRAILGRIP GRAINは、機能と見た目のバランスを追求し、〈モンクレール〉というブランドのアイデンティティにおける、まったく異なる2つの部分を融合させたシューズだと思います。そして、プロダクトデザインにおいてもうひとつ重要なのは、強度の確保。これもTRAILGRIPが表現していると思います。以上の2点が決め手になり、TRAILGRIPを採用しました。極端に偏ったシルエットにすることもできましたが、それはこのプロジェクトの依頼にはそぐわないと思い、今のデザインになりました。
――最後に、今回のプロジェクトに参加した感想を改めて教えてください。
今回のコレクションを作る上で最も難しかったのは、自分1人で完成させなければならなかったこと。今でこそ小さなチームがありますが、半年前までは自分ひとりで仕事をしていたので。同業者や他の天才デザイナーの多くは、自分のアイデアを実現するために多くのチームを抱えていますが、僕は基本的に1人でミラノに行き、ハイファッションのコレクションをデザインする方法を、その場で考えなければなりませんでした。
とりわけ苦労したのは、服を作るプロセスですね。僕はこれまでペンと紙、あるいはノートパソコンを使ってデザインすることに慣れ親しんできたのですが、ミラノに到着すると、ハサミと材料を渡され、サンプルを試着するためにモデルが待機していたんですから。もちろん、〈モンクレール〉のチームはとても親切で、僕と同じように新しいものを作りたいという意欲を持ってくれていましたが、これは僕が慣れ親しんだクリエーションの方法とはまったく異なるもの。最終的には、この方法が非常に有益であることを知ることができたのですが、最初は不安で、自分のコンフォートゾーンから飛び出すことに怖さを感じていました。
それでもなおやり遂げることができたのは、ひとえに〈モンクレール〉のチームのおかげ。僕が疑問に思っていたことや、知らなかったことは、〈モンクレール〉のチームがすべて解決してくれました。僕たちはしばしばひとつのレンズを通してブランドを見ますが、この協業を通して〈モンクレール〉のさまざまな可能性を見ることができるようになりました。
プロフィール
Salehe Bembury
サレヘ・ベンバリー|1986年、アメリカ・ニューヨーク生まれ。大学卒業後、数々のシューズブランドでのインハウスデザイナーを経て、独立。〈クロックス〉を始め、数々のブランドとコラボレーションしている。
MONCLER × Salehe Bemburyのコレクションを見てみよう。
インフォメーション
MONCLER
モンクレール ジャパン☎︎0120・938・795
Official Website
https://www.moncler.com/
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