ライフスタイル

【#4】モロッコの旅 消費

執筆: 山野アンダーソン陽子

2023年5月7日

illustration: ©︎Kuniko Nagasaki
photo & text: Yoko Andersson Yamano
edit: Yukako Kazuno

私が旅したモロッコのどの街も、フォトジェニックではあったが、匂いが独特でもあった。猫とアルガンオイルとオレンジフラワーの入り混じった匂いと少しのゴミの匂いが大気の暑さでモワッと鼻に付く。私の前を大量に積まれた出来立ての天然皮革が通り過ぎた時、その匂いの強さに息を止めた。「皮革の匂い」は知っていたが、こんなにも強烈な獣の匂いなのだと思い知らされた。

それにしても、物の多さに圧倒される。こんなにたくさんの山盛りに積まれた物を私たちは本当に消費し切れるのだろうかと、素材やその行く末を考えさせられ、複雑な気分になった。電車で7時間ほど旅した時に車窓から目にした集落の裏手に必ず広がる大量のゴミの山。所々に火が付けられ、そこでロバや犬が餌をあさり、猫がくつろいでいる。その一部には小さなサッカー場が作られ、子供がサッカーをし、そのそばで老人が座っている。ゴミの匂いが加わったスモーキーな匂いが電車の中にも広がった。

スウェーデンでは、ゴミを簡単にリサイクルに回せる設備が整っている。そんな環境の中にいると、何も考えずに自分が消費社会にきちんと向き合っているかのような勘違いを起こしかねない。「モノ」が溢れている現実に、私たちはどう向き合ったらいいのだろうと、モロッコの旅で問われた気がした。

プロフィール

山野アンダーソン陽子

ストックホルムを拠点とするガラス作家。スウェーデンの国立美術工芸デザイン大学で修士課程を修了。北欧最古のガラス工場であるコスタ内の学校で吹きガラスの手法を学ぶ。スウェーデン、イギリス、日本などで作品を展開。2023年11月3日より広島市現代美術館、2024年1月17日より東京オペラシティ アートギャラリーで山野さん発案のプロジェクト「Glass Tableware in Still Life」の巡回展が始まる。

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