ライフスタイル

【#2】モロッコの旅 違和感

執筆: 山野アンダーソン陽子

2023年4月23日

illustration: ©︎Kuniko Nagasaki
photo & text: Yoko Andersson Yamano
edit: Yukako Kazuno

マラケシュの中心地から少し離れた美術館に行くため、まだ暗がりの残る朝8時ごろのローカルバスに乗り込んだ。運転手は女性。入口で4ディルハム(50円ほど)を払い、小さな紙切れ(チケット)をもらい乗り込む。車内に入ると全ての椅子はすでに乗客で埋まっていた。私は後部ドアの近くに立って、ゆっくり進む外の景色を眺めながら何の違和感もなく今日のランチなどに思いを馳せていた。ふと、旅先でローカルバスに乗るとありがちな不安感が全くない事に気づく。なぜだろうと見渡すと30人ほどの乗客は全員女性だった。もちろん女性専用車などは存在していない。

モロッコのどの街も「乗り物」でごった返している(様に見える)。「乗り物」と定義していいの分からないが、よく目立つのがロバやポニー、ミュール(馬は高額らしくあまり見ない)などやバイク、車(タクシー、バス)が多い。そのほとんどの乗り物は男性が運転している。バイクも二人乗りをよく見かけるが、運転しているのは男性で、後ろに座っているのは女性がほとんどだった。気づけば、街には男性しか存在していない様でもあった。あの日のバスは幻だったのだろうか。自分の中に何かしらの違和感を感じたがうまく説明がつかない。面白そうなので、旅を続けながらその違和感が何なのか思考する事にした。

プロフィール

山野アンダーソン陽子

ストックホルムを拠点とするガラス作家。スウェーデンの国立美術工芸デザイン大学で修士課程を修了。北欧最古のガラス工場であるコスタ内の学校で吹きガラスの手法を学ぶ。スウェーデン、イギリス、日本などで作品を展開。2023年11月3日より広島市現代美術館、2024年1月17日より東京オペラシティ アートギャラリーで山野さん発案のプロジェクト「Glass Tableware in Still Life」の巡回展が始まる。

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