ライフスタイル
【#1】量子力学のトキワ荘
執筆: 髙城晶平(cero)
2023年4月11日
photo & text: Shohei Takagi(cero)
edit: Yukako Kazuno
量子の世界は面白い。面白すぎる。
今、話題になっている『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』なんかでも中心的なテーマになっている“多世界解釈”という概念も、元は量子力学に端を発している。
我々の世界を構成する最小単位である原子(さらに言えば電子、陽子、中性子など)は、我々の日常感覚をはるかに超えたふるまいをみせる。通常、物体は同じ時間に一つの場所にしか存在できない。あなたのポケットの中にある鍵が、同時に家の玄関ポストに存在することは不可能だ。しかし、一粒の粒子は同時に複数の場所に存在(共存)することができる。まるでオバケのような奴なんです。しかも、もっと不思議なことに、そんなオバケみたいな粒子は、なんらかの形で“観測”が為された瞬間に、一つの場所にしか存在できなくなったりする。さらにさらに、量子エンタングルメント(もつれ)という意味不明な特徴があってうんぬんかんぬん…という感じなんですが、そんな幻のような、蜃気楼のような物が基礎になってこの世界が形づくられているって、はっきり言ってヤバくないです⁇

で、この量子力学という分野は、様々な経緯の末に、ボーア、ハイゼンベルク、ボルン、シュレーディンガー……と、何人かの学者さんたちによって拓かれたのだけど、なかでもニールス・ボーア研究所を中心とした学者グループが、自分にはどことなくトキワ荘の面々と重なってみえたりする。特にボーアは「みんなで協力しあって未来を作ろうじゃないか」というタイプで、先輩肌のテラさんと重なるところがある。
そんなことを思っていたら、先日ライターの松永良平さんから興味深い話を聞いた。曰く、テラさんは、自身の作風のとおり素朴でシンプルな内容のものを好んだため、漫画家仲間で大人向けの映画を観に行ってもさっぱり内容が理解できなかったという。実はボーアにも全く同じエピソードがあるのだ。学者仲間で西部劇映画を観に行くと、彼は決まって隣人に「あれは主人公の妹? 妻?」とか「今のが敵? 味方じゃなくて⁇」とか、質問しまくっていたらしい。
どうでもいいような一致ではあるんだけど、たまたま続けざまにこのエピソードに出くわしたものだから、誰かに教えたくてたまらなかった。そんな話。ボーアとテラさん。もしかしたら二人は途方もない量子のいたずらでエンタングルした存在だったのかもしれないですね(適当)。
プロフィール
髙城晶平(cero)
ceroのボーカル・ギター・フルート担当。2019年よりソロプロジェクト “Shohei Takagi Parallela Botanica”を始動。2020年4月8日に1st Album『Triptych』をリリースする。その他ソロ活動ではDJ、文筆など多岐に渡って活動している。5月24日にceroの新作『e o』をリリース予定。
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