カルチャー

【#4】Island Talk

執筆: 山縣良和

2023年4月5日

photo & text: Yoshikazu Yamagata
edit: Yukako Kazuno

はまゆうさんと島の展示会

島に魅了されている僕は、何かこの島で今後も色々とやってみたいという想いが膨らみ、まずはこの島で展示会をやってみるのはどうだろうと思いました。まずはできることから少しづつ。

そして、もう1人小値賀島でご一緒したのが、長年お仕事をご一緒していて同級生でもある写真家の濱田祐史さんです。以前も五島列島に一緒に来たのですが、小値賀島は初めてです。

定期船、はまゆうからのビュー。

小値賀、野崎島を結ぶ定期船の名前が“はまゆう”だったので、その時から僕らの中で濱田さんは“はまゆうさん”になりました。

はまゆうと僕とはまゆうさん。

今回はまゆうさんにLOOK撮影と小値賀島での展示会を一緒に制作しました。

撮影する合間に一服するはまゆうさん。
石拾いをするはまゆうさん。

展示会場は、僕らが来島時いつもお世話になっている小西旅館の本家であった旧小西邸をお借りしました。旧小西邸は、小値賀町を代表する近代建築物でもあり、今後の町の文化的拠点として運営していく計画がある場所で、とても趣があります。

趣のある旧小西邸。

と言っても何年も使われていない埃まみれの建物。皆で大掃除から始めました。

みんなで掃除。
街のいろんなところにポスターを貼ってもらいました。

小西邸の空間は素晴らしい場所で、素敵な空間に仕上がりました。こんなに贅沢な空間での展示は東京ではなかなかできません。

島で展示会をと云っても、まだどのように開催するのが良いかわかりません。島の方々と話し合いながら制作を進めてきました。役場の方々とお会いしたり、街にポスター貼ったり、回覧板を配ったり、駅伝大会に合わせて、餅つき大会も企画しました。

島の方々にも参加してもらえる企画にするために、島の方々と話し合って会場で餅つき大会を企画。
たくさんの餅ができました。

開催中には『古老に聞いた島の暮らし―五島列島小値賀町大島に生きる』という本を執筆された、上五島にお住いの歌野杳さんと編集者の石神さんと島の暮らしや、可能性に関しての対談を行ったりしました。歌野さんが小値賀町大島に何度も通われてまとめられた本には、古くから行われている島特有の制度についての記載があります。それは大島の中で島民の協議によって最も困窮している世帯を選び、隣島の宇々島へ移住させるというものです。宇々島では住まいや田畑が用意され、農業や畜産業などを営み、賦役や税も免除され、少しずつ蓄えを作ることができました。生計を立てられるようになると大島に戻る。この制度は享保の大飢饉の頃から始まり、昭和30年代まで200年以上続いた制度だそうです。

そして日本各地の島で稀に見られるそのような救済制度を「困窮島」と命名したのは折口の師にして日本民俗学の確立者、柳田國男だと言われています。現在では「自力更生の島」と呼ばれるようになっています。

笑顔が素敵な歌野さん。写真は五島で民宿を運営されている阿部裕介さんが撮られました。

また、歌野さんと歌野さんのご両親は、上五島でひろんた村という自給自足の老人ホームを運営されています。歌野さんやその施設に関わるスタッフの方々は、半農半介護のライフスタイルをされていて、有機農業や放牧の養豚などをやられています。

このようなお話を島でたくさん伺いながら、多くのインスピレーションをもらいました。そしてこれら小値賀島諸島の暮らしや、このような「自立更生の島」のような持続的セーフティーネット制度に学び、それを継承する形で、新たな場所や活動ができないだろうかだろうかと模索しています。例えば、糸づくりや糸紡ぎなどのものづくりの源流に触れることができる場所や、こころの拠り所となる場所、装いを通して新しい表現が生まれる場所などなど。これらの島々から、まだまだたくさんの学びがありそうです。

島の皆さま、多くの経験や学びをありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

プロフィール

山縣良和

やまがた・よしかず | 1980年、鳥取生まれ。〈writtenafterwards(リトゥンアフターワーズ)〉デザイナー・「coconogacco」代表。2005年セントラル・セント・マーチンズ美術大学ファッションデザイン学科ウィメンズウェアコースを卒業。2007年4月自身のブランド〈writtenafterwards〉を設立。2015年、日本人として初めて LVMH Prizeにノミネート。デザイナーとしての活動のかたわら、ファッション表現の実験と学びの場として「coconogacco」を主宰。2019年にはThe Business of Fashion が主催するBOF 500に選出。2021年第39回毎日ファッション大賞 鯨岡阿美子賞を受賞。