カルチャー
三宅唱のPOP-EYE CINEMA/『ビーチ・バム まじめに不真面目』
『ビーチ・バム まじめに不真面目』公開記念企画Vol.3
2021年4月20日
2021年5月 889号初出

『スプリング・ブレイカーズ』の終盤、ジェームズ・フランコらがプールサイドでピアノを弾きながらブリトニー・スピアーズ「エブリタイム」を歌う場面。いったいあの場面はなんなのか、一度真剣に考えてみたことがある。「儚い」という単語では到底収まらない、妙な感情を覚える場面だ。
ブリトニーの曲を歌うという選択があまりにも絶妙だから? 曲の旋律? 歌声のか細さ? 夕方の光? プールサイドというシチュエーション?
どれも効果を発揮しているのは間違いないと思うが、何度か繰り返し観直しているうちに、個人的にはなかでも、ほんの一瞬挿入されるあるカットに虚を突かれた。
それは、歌う一群とピアノを、プールの水面ぎりぎりのローアングルで捉えたフルショットである。そのアングルのせいで、彼らが今足をつけているその場所がほんの少しの厚みしかないものとして捉えられている。なんだか、かれらがまるで水面に浮いているかのような、いつ水中に落ちてもおかしくないかのような印象を受ける。薄氷のような地面。彼らが今そこに存在していることそれ自体がほとんど奇跡のような、ギリギリの状況。そんな場所で、あんな時間に、つかの間、彼らはただ歌う。それを観ていると、「儚い」という単語では収まり切らない感情に襲われる。
ハーモニー・コリンの映画ではいつも、世界はとっくにぶっ壊れている。そこで人間たちはどのような時間を過ごすのか? ハーモニー・コリンが描くのは、まるで終末後のクソみたいな世界でクソみたいな人間たちが過ごす、まるでパーティーのような生の時間だ。
『ビーチ・バム』も、タイトル通り水辺で生きる人間たちの物語だった。『スプリング・ブレイカーズ』以上に、水面越しで人物が捉えられる。あるいは、人物の奥にたびたび水面が現れる。一体主人公がラスト、どんな場所にいるのか? そこで何をするのか?
とにかく、『スプリング・ブレイカーズ』以上の脱力感、クソ感、祝祭感。いやあ、こんなもの、延々と観てられる。なんて幸せな映画なんだろう!
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三宅唱
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