カルチャー
【#3】ローカルで起業する
2022年10月31日
text: Tomohiro Okusa
地方に移住したとして、さて、何をしようか。そもそも移住の目的として、その地でお店をやりたい、事業を起こしたいという人がいる。ローカルで起業する。大変そうだけど、なんだか楽しそうだ。
ローカルだからこそできることってなんだろう? 移住して何を、どうやるか。地域や人の数だけパターンはあり、正解はないと思う。が、モデルケースとなる事例はあるのでいくつか紹介したい。
山口県岩国市にUターンして〈ARCH BREWERY(アーチブルワリー)〉を立ち上げた柳昌宏さん。若い頃に岩国がイヤで飛び出すというよくあるパターンだが、「つまらないのは、このまちではなく自分自身だった」と、気がついたという。
同じようにUターンして、伊豆大島で〈青とサイダー〉というゲストハウスを運営する吉本浩二さん。「移住者のほうが、地元の僕よりも大島の魅力について知っている。そういう風に大島を語れないなと思ったんです」という。
どちらも、若い頃に地元に愛情を持てず、外からの目線で、初めて地元のおもしろさに気が付いたのだ。それを思い返して現場に生かしているのだからすばらしい。
次は、ローカルの環境がものづくりに影響しているという3組。
スペースが確保できるローカルだから叶いやすい「家と工房とショップが併設されたお店」を運営しているのは、北海道三笠市にUターンした木工作家の内田悠さん。
「『現実離れしたおしゃれなお店』というよりは『生活のなかにあるお店』を意識しました。日常的に使うものだからこそ、リアルな暮らしと重ね合わせられる場所で、選んでほしいんです」
静岡県南伊豆町に移住した〈TARASUKIN BONKERS(タラスキンボンカーズ)〉の近藤拓也さんと北田啓之さん。彼らにとってプロダクトづくりのインプットは日常の暮らしだという。
「浜辺に行ったり、空を眺めたりするときに、“こういうものがほしいな”と思い浮かびます」と近藤さん。
「外部のニュースが入らないので、ただ純粋におもしろいと思えるものをつくれたのかもしれません」と言う北田さん。
沖縄県那覇市に移住し、レストラン〈CONTE〉を経営、雑誌『CONTE MAGAZINE』をつくる川口美保さんが見つけたものは、東京の頃から使っていた「顔の見える関係」という言葉の実感。
「顔が見える人から食材を買い、顔が見えるお客様からお金をいただく。そのお金でまた顔が見える人から食材を買う。お金の流れが明快で、気持ちいいですね」
最後に、こんな移住スタイルもある。
徳島県美馬市に移住し、〈白草社〉というスリランカカレー店を営んでいる乾亮太・歩希夫妻。当初は、「ローカルコミュニティありき」という移住の幻想に悩んだという。 「そもそも僕らは地域を盛り上げにきたわけではありません。ここで暮らしているのは大好きな川が近くにあるから。ただ、コミュニティに積極的に関わってなくても、地元の人はやさしいので何かあれば声をかけてくれます」
いろいろなカタチがある移住とローカル起業。「よそもの」の視点を持ったローカルでの起業は、地域活性化なんて大層なものではなくても、地域をほどよく「混ぜる」ことになることが多いのだ。
プロフィール
コロカル編集部(大草朋宏)
コロカル編集部|2012年、日本の「地域」をテーマに始まったウェブマガジン。「ローカルは楽しい! ローカルはカッコいい! ローカルは進化している!」という視点を、集合的なかたちにして日々発信。すぐれた実践で課題を乗り越え、新しい生き方、働きかたを見つけて暮らす人やコミュニティの存在とそのストーリーを伝えている。
Officilal Website
https://colocal.jp/
おおくさ・ともひろ|1975年、千葉県生まれ。フリーランスの編集者・ライターとして活動しながら、コロカル編集部に所属。昨年、金沢に移住し、ローカルでの活動も模索中。
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