【#3】電車のおばちゃん
2022.09.23(Fri)
text: Issei Kunisawa
edit: Yukako Kazuno
今から10数年前、僕がまだ高校1年の時の話なのですが、電車に乗ってるといつも僕が乗り込む駅から2つ進んだ、とある駅で乗り込んでくるおばちゃんがいたんです。
いつも席に座らずドアのところに立っているんで、なんであの人座らないんだろなぁーと思っていたんです。
さらに不思議な事に、最初はよく一緒になるなーとしか思っていなかったのですが、毎日一緒…
僕が少し遅刻しかけた時も、車両を変えた時も、毎日ずっと一緒なんです。
だんだん怖くなってきて、そのおばちゃんが乗り込むとゾッと寒気を感じるようになってきたんです…
でもそのおばちゃんは、僕のことを見たりせず外ばかり見ているので、気にしすぎかなぁーと思っていたのですが…
ある時電車がトンネルに差し掛かった時…
あっ、あのおばちゃん、外なんて見ていない、とわかったんです…
真っ暗になり、ガラスにおばちゃんの顔が反射した瞬間…
ガラス越しに僕と目が合ったんです…
そしておばちゃんはニコッと笑って次の駅で降りて行きました…
「やっぱり俺の事見てる…」
気持ちが悪くなり、その次の日は電車を使わずバスに乗りました。
するとそのバスに、おばちゃんがいたんです…
そしてまた窓に反射した僕をずーっと見てるんです…
あまりにも怖くなり、母にその話をしました。
「ストーカーなのかな?」と心配して「明日ついていくよ」と言ってくれて、ちょっと恥ずかしかったけどついてきてもらいました。
すると、またあのおばちゃんが乗ってきたんです。
「あのおばちゃん」って母に言おうと思ったら母が唇と手が震えだし、
「あの人でしょ」と僕に言ってきたんで「そうだよ」と答えると…
「わかった」と言ってそれ以上何も言わなかったんです…
それから数日後なんです。
母が洗濯物を干しにベランダに出ると悲鳴をあげました…
慌ててベランダに行くと…
ベランダから見える公園があるんですが、そこからおばちゃんがこちらをジーッと見てるんです…
首を吊った状態で…
ずっとあのおばちゃんが何なのか聞けなかったのですが、ついこの前、父から教えてもらいました。
実は、あのおばちゃんはお父さんの元交際相手やって、別れてお母さんと結婚してお前を授かった時に「その子は私の子」ってずっと言っていたんだよ…
どれだけ違うと言っても聞かなくて、何度もお前のこと誘拐しようとして一度逮捕されたこともあって、接近禁止命令も出てたんだけど、それを破ったからまた通報したんだ…
そしたら公園で首吊って死んだんだよ…
「でもあの日以降いなくなってよかったよ…ずっと不安だったからな…」
父はそう言うんですが…
実は僕、今でも時折り、窓に反射したあのおばちゃんと、目が合うんです。
國澤一誠
くにさわ・いっせい | 1984年、大阪府生まれ。4歳年上の叔父とお笑いコンビ「ヒカリゴケ」を組み、多くの番組に出演。コンビ解散後は、イラストレーターや「BOKURANOTE cafe and bar」運営を行う傍ら、怪談系YouTuberとして注目を集めている。
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