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カルチャー
シティボーイの額装術。Vol.2
額装オーダー/Tシャツ&カセットテープ編
2022年8月12日
photo: Koh Akazawa
text: Toromatsu
edit: Kosuke Ide
cooperation: Yu Kokubu
額装を知る長い旅に出た〈POPEYE Web〉チーム3名。目黒区八雲の老舗額装店「ニュートン」に訪れると、早くもシルクスクリーン版画の額装において多くを学ぶことができた。次いでは僕たちの“どんなものでも額装できるのか”という疑問をぶつけるべく、少々トリッキーなオーダーをしてみたわけで――。
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シルクスクリーン版画の額装オーダーでは“フロート”と呼ばれる、作品をひと回り小さい土台の上に置き、展示物が浮いて見えるように額縁にセットするワザなどを知った一同。「ニュートン」ではどんなものでもスタッフが現物を確認して、依頼者とともに額装方法を決めていってくれるから自ずと知識がつく。そこで僕たちは、次に筆者(トロ松)が持ち込んだ「Tシャツの額装」について話を進めることに。
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メンズなら一枚くらい、他人に自慢したいTシャツを持っていると思うけど、そういうものをカッコよく部屋に飾りたいと思ったことがある人も少なからずいるだろう。ちなみにこのTシャツは1970年代アメリカの伝説的なディスコTV番組『ソウルトレイン』のもので、当時、同番組が日本で放送された際の番組スポンサーだったアパレルブランド〈JUN〉から発売されていたソウルファン泣かせの貴重な一枚。筆者がたまに着てソウルバーなんかに繰り出すと、先輩方から「着るもんじゃない、飾っておきなさい」とよく言われていた経緯から、今回額装を決意した。
「ニュートン」店主の鷹箸廉(たかのはし・れん)さんとまず相談したのはTシャツのレイアウトだ。服を折り畳むことなく額装するのは、スポーツ選手のユニフォームなどでもよく見受けられるが、それだとどうしても額のサイズが大きくなってしまい、展示にも広い壁面スペースを必要としてしまう(フレームサイズが大きいと当然、価格も高くなる)。迷っていると、「ブランドタグとプリントが見えるよう、Tシャツを畳んで額装するのはどうでしょう?」と鷹箸さん。広げて飾るより大げさになり過ぎないのもこのレイアウトの良いところ。展示物にL字のフレームサンプルを当ててくれることで、しっかりイメージも湧いたので提案の額装方法でお願いすることにした。
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次はフレーム選び。試しに色のついた木枠のカラーパネルのサンプルを近くに置いてみると、カジュアルな雰囲気が好印象! Tシャツと同じレッドカラーの木枠を用いることで満場一致。マット幅もサンプルを当てていきながら、余白を少し大きめにとることに決定した。Tシャツを畳んで飾る際のたるみやズレが心配になったので、確認すると「台紙を用いてテグス(細くて透明な糸)で要所を留める」ときた。丁寧な仕事ぶりに感動(!)。額縁に厚みが出てしまうことで木枠の作成から行わなければならず、しかもフレーム完成後「ニュートン」でテグス作業をしなくてはいけないから、少々値は張るものの、特別な額装だけに期待は大だ。
最後に、額装した作品を展示するための方法も相談する。鷹箸さんが紹介してくれたのは、「ドッコ式」と呼ばれる手法だ。一般的に額はフレーム裏側の両端に渡した吊紐を壁面に設置したフックや釘などに掛けて吊るすことが多いが、その際、壁面と額の間に小さな隙間が生まれ、額がわずかに前傾することになる。これに対してドッコ式では、作品側と壁側にそれぞれ凹凸となる突起材を取り付け、互いにひっかけ合うことで作品と壁との間を極力少なくし、額を壁に対して平行に設置することができる。わずかな違いながら、そのフラットな外観はスッキリとして美しい印象をもたらす。重量のある展示物にも向いているとのこと。鷹箸さんのレコメンドどおり、ドッコ式を採用することにした。
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続いて、コクブさんが持ち込んだ写真の額装オーダーだ。ちぎれた跡のある小さなモノクロ写真は、現代美術作家のミヤギフトシさんから送られてきた郵便物の一部。美術関連のインヴィテーションカードなどのいわゆる「エフェメラ」類を収集しているなかで、焼け具合が良い感じになってきたこともあり、額装してみたくなったとか。
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フレーム選びではビーチ材のオイルド加工を採用。家族写真や風景写真などの一般的な写真とは異なり、ひとつのオブジェとしての魅力もあるのがこの作品の面白さということで、前回のシルクスクリーン版画と同じく“フロート”を用いて額装することに。フレームの厚みは、ほぼ限界の細さとなる9mmを選択。写真サイズが9cm×6cmと小さいため、フレームがあまり太くなると額の存在感が強調され過ぎて、展示物になかなか目がいきにくくなるという。
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あとはコクブさんが持ち込んだ2本のカセットテープ。レコードを額装する人はいても、カセットテープを額装するなんてちょっと無理難題な気がしなくもないけど(しかも2本)、額装の可能性を知るためにはうってつけだとも思った。コクブさんは鷹箸さんに「2本を並列に飾れるようにして、木枠で表面カバーはなし、あとはカセットの入れ替えをスムーズに行いたい」とオーダー。もはや額装なのかさえ怪しいが(笑)、鷹箸さんは「ちょっとお借りして考えさせてほしい」と意外と乗り気! さすがは“額装のことなら何でもご相談ください”と公言しているだけのことはある。
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そんなわけでTシャツ、写真、カセットテープのオーダーも終了。専門店に来たことで、あまりに非現実なものでない限り大抵のものは額装は可能であること、そのほかアートやポスターに限らず、立体物などにもさまざまな額装方法があることなどをよく理解することができた。金額はTシャツの額が約6万円で、小さな写真の額が約1.5万円、カセットテープの額が約3万円。鷹箸さんは「出来上がったときに、既製品フレームとは明らかに異なるのがわかりますよ」と仰っていたけど、それぞれがどんな風にできあがったのかは次回、シルクスクリーン版画の額装を含めたVo.3完成編にて!
インフォメーション
額縁・額装店 newton
Official Website
http://newton-frames.com
Instagram
@newton_frames
@noie.cc
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