ライフスタイル
【#2】メッセンジャーバッグの神様エリック・ゾーとZineとチョコパイ
執筆: 桂井智彦(Manila Books & Gift )
2022年2月17日
photo & text: Tomohiko Katsurai
edit: Yukako kazuno
その頃には「NEW YORK ART BOOK FAIR」以後、NYABFにサンフランシスコに行き、始まる前日までにニューヨークに移動するのが毎年のルーティンとなっていた。
サンフランシスコでは本屋、服屋、雑貨屋からスケートショップまで、必ず誰かが作ったZineが置かれている。それらには、しっかりと時勢やトピックも反映されている。Zineを通して、気軽にアートや様々なカルチャーに触れる事ができる街が完成しているのである。やはり魅力のある街だ。
人間は欲深い。店主はZineも自転車も大好きだ。いわゆるピストバイク。(ブレーキが付いて無いと警察に怒られる方の自転車)
せっかくの機会なので店主の忘れられないエピソードを記しておきたい。みなさんはErik Zo(エリック・ゾー)氏をご存知だろうか? 「Zo Bags」のブランド名で、世界中に熱狂的なファンを持つ人物だ。元メッセンジャー、自転車便の配達人で、現在のメッセンジャーバッグ(自転車乗りが肩に斜めにかけるタイプのカバン)の原型を作ったと言われている。現在は、ほぼ販売はされておらず、気が向いたら仲間のために作る程度で、中古でも高額で取引されている。

サンフランシスコ在住とは知っていたので、いつか会えたらいいなと思っていた。しかし彼は写真が嫌いらしく顔がわからない。でも会いたい。あわよくば欲深き店主、ZoBagも欲しい。
その日は突然やってきた。何故か不思議な感覚に陥り、今日は会えるのではないか?と思ったのだ。サンフランシスコには自転車屋が多い。ピストバイク好きなら、誰もが知る「MASH」というお店がある。サンフランシスコに訪れた際は、必ず行くと決めている。そのおかげか、「MASH」では多少は知られた顔になっていた。普段はぶっきらぼうな人なのだが、その日は暇だったのか、色々と話しかけてくれた。自分のZoBagコレクションを見せてくれたりする。いつもとはなにやら違う。冗談のつもりでZo Bagは売ってないか?と聞いてみると「彼はここに居るから聞いてみれば?」と言う。なんという事だ。Erikに会えるかもしれない。3ブロックぐらい先の美術館の様な建物をGoogle マップで教えてくれた。
突入だ!
朝の不思議な感覚が僕を突き動かしていた。スタッフらしき人に聞いても知らないと言われる。しかし諦めない。どのくらい探索したであろう。その時、僕の目に飛び込んできたのは雑誌で見たErikの自転車だ!

階段を駆け下りると独特な風貌の男が立っている。Erikだ!間違いない。
それからの記憶は夢のようで曖昧だが、Erikがフイルム写真を撮っている事、この場所で展示の準備をしていた事。彼の愛用品としてのエピソードの一つである、寅壱のニッカポッカは生産が日本じゃなくなってからは履いてない事。そんな話を聞かせてくれた。そしてなんとお土産まで。
Erikお手製の牛乳パックが表紙になっているメモ帳とZineだ。こんな時もやはりZineなのである。
おそるおそるZoBagが欲しいと伝えたが、Erikは「ない」としか言わなかった。まだ作っているのか、買えるのか聞くのも野暮に思えて聞かなかった。いや、聞けなかった。
そんなErikが最後に何故かチョコパイをくれたのである。無色透明な包装が怪しく光っている。Erikがくれたチョコパイ。カリフォルニア州は色々と合法だ。でもあのErik Zoがくれたチョコパイだ。そんなはずは無いし、どうしても日本に持ち帰りたい気持ちでいっぱいだ。が、万が一の事態は避けなければならない。いっそのこと、食べてみようかとも思ったが、やはり理性が許さなかった。
結局Erikのチョコパイは写真に収めるだけにした。街のゴミ箱に捨ててしまったチョコパイは、いつか自分のZineにこっそり写真に忍ばせる事で、Erikのチョコパイに対する弔いとしようと思っている。
プロフィール
桂井智彦(Manila Books & Gift )
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