カルチャー
【#3】エモいのため
2022年1月26日
text: Yukimaru Kumaki
edit: Toromatsu

音楽家のコラムなのに全然音楽の話しねぇな、と思ったので今回は音楽にかかわる話をします。あなたのエモいの話。
私はディズニーピクサー作品が好きなのですが、その中でも特に「リメンバーミー」がお気に入りです。曲も良い。映像も良い。観るたびにボロボロと涙を流してしまう作品です。あと、当然トイストーリーは最高だし何と言ってもカーズが…。世の中には素晴らしい作品がたくさんあります。
音楽も毎日たくさんの素敵な音が届けられています。とても一人の人生では消費しきれない音楽たち。「こんなに音楽って必要なの?」と思う方もいるかもしれません。
私は必要、というかジャンジャンやってくれ!と思っています。映画や音楽、食事でも景色でも、深い夜に友達とする会話でも、私たちがそれら外的刺激を取り込んだとき、それに反射して心が動きます。そのとき生まれた感情は作品が呼び起こしたものではありますが、もともとは自分の奥底に眠っていたものです。これまでの記憶とくっついて生まれた、私の子どもです。
嬉しい。悲しい。辞書で引くと、感情が言葉として定義されています。しかし私たちはそれぞれ違う毎日を生きています。それぞれの身体を通して出てきた感情には、それだけが持つ色、におい、音、感触があるはずで、それは言葉だけでは簡単には説明しきれないものです。また、色々なものに触れることができる現代ですから、その分多様性は増しています。今日生まれたこの感情は歴史上初、私だけのオリジナルなのです。
「エモい」という曖昧なままでいられる言葉が使われるようになったのは、こういったオリジナルな感情が言葉では定義できないということの裏返しなのではと思っています。そういったオリジナルな感情にフィットする表現というのは限られています。たくさん曲が生まれて良いと思う。それは生まれた感情にフィットしうる表現が世界に存在していて欲しいからです。
「別れ」をテーマにした楽曲はごまんとありますが、私たちは同じ「別れ」を経験しません。それは「フラれて悲しいチクショー」かもしれないし、「お互いの未来を想った決意」かもしれません。ごまんとある楽曲の中でも、あなたの「別れ」の物語にフィットするものは限られています。言葉はフィットするけど音がうーん…なんてこともあります。かつては響いたけどこの「別れ」はなんか違うな…と思ったり、言葉が余計なこともあります。音楽じゃうまく表現されないことも。それぞれの「別れ」にフィットする表現があります。
たくさんの表現が世の中にあることが、自分にフィットして物語を救ってくれるものと出会える可能性を与えてくれます。フィットした表現は、その人にとって光となります。なので、これからもたくさん表現が生まれて欲しいと思っています。またそういった土壌として、自分の表現を外に出すことが認められている環境はとても大事なことだと感じています。
生まれた子どもを愛して表現したいと日々思っていますし、願わくは誰かの感情にフィットできるよう試行錯誤しています。
あとリメンバーミーを観てください。ピクサーは吹き替えで見る派なんですが、ミゲルが歌う”Remember Me”がめちゃくちゃ良いので、それも聴いて!
読んでくれてありがとうございます。それではまた来週。ナイスグルーヴ!
プロフィール
熊木幸丸(Lucky Kilimanjaro)
くまき・ゆきまる | 埼玉県生まれ。“世界中の毎日をおどらせる”をスローガンに掲げる6人組バンド、ラッキーキリマンジャロのフロントマン。Hey! Say! JUMPやDISH//に歌詞・楽曲提供も行う。2022年にはパシフィコ横浜をファイナルとした全国ツアーも始動。
HP
http://luckykilimanjaro.net/
Twitter
https://twitter.com/yukimaru_lk
Spotify
https://open.spotify.com/artist/2V8UZPMR1EbkXhzvEGBTrV?si=RUvn6APaTTGbkkO-7SSAWw&nd=1
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