ライフスタイル
【#1】店主、Zineの沼に堕ちる
執筆: 桂井智彦(Manila Books & Gift )
2022年2月10日
photo & text: Tomohiko Katsurai
edit: Yukako kazuno
はじめまして。名古屋で”Manila Books & Gift “の店名で、ZineとZineレーベルのグッズを販売している店主です。
よく聞かれるのですが、店名のマニラ(フィリピンの首都)には縁もゆかりも無かったはずでしたが、お店のオープンとほぼ同時に、近所にフィリピン料理と食材のお店ができまして、そちら目当てのフィリピンの方々の大混乱に陥れながら営業を続けております…。
Zine(ジン)とは世界中で作られている個人or少人数で作った薄い少冊子です。見た目は、薄いパンフレットみたいな物が多く、内容は紙媒体で表現できる物なら「何でもあり」のジャンルレス。アートとカウンターカルチャーとは相性抜群で、イラスト・漫画・写真・小説・詩・政治まで人の想いの数だけ多くのZineが世界中に存在します。
それを交換したり、販売したりする事が現代まで続いているのです。これがプロフィールに書いた、『世界を巻き込んだドタバタ交換日記』と表現した、店主なりのZineに対する想いであります。日本でも何度かのムーブメントを起こしてきました。最近では、世界流通させるようなZine専門の出版社が出てきたり、著名なアーティストがZineで作品を発表したり、とZineそのものが時代の変換期に来てるのかなと思っています。
願わくば、紙媒体が売れない時代に可能性を感じさせる小粋な存在であってほしい…。
店主とZineの出会いはかなり遅く、近所の服屋さんにお客さんが持ち込んだZineが置かれていたのがきっかけです。当時は、サンフランシスコに拠点があった「HABURGER EYES」です。編集長のRay Potesがセレクトする有名無名を問わず、西海岸の写真家を中心としたモノクロのストリートフォト集が、強烈に刺さりました。モノクロの陰影と、後からやってくる哀愁に触れたのも、この時が初めてでした。
その電流に撃たれた僕は、忘れもしない『BRUTUS』のカリフォルニア特集を片手に、サンフランシスコの「HAMBURGER EYES」オフィスのドアを叩いていました。そこでは、編集長のRayと弟のDavidが唖然とするぐらい自然に迎えてくれ、彼らは何の気取りも無く自然にZineの制作をしていました。
その姿を見ながら「Zineは特別な物じゃない!」とそれまで勝手に自己完結させていたZineカルチャーに対する思いが、ガラガラと音を立てながら足元から崩れ、店主は沼に堕ちました。
おまけにサンフランシスコと言う深い沼に堕ち、沼から這い上がりながら毎年サンフランシスコに通い、いつの間にかZine屋になるとはこの時点では考えもし無かった頃の話です。
プロフィール
桂井智彦(Manila Books & Gift )
Zine屋“Manila Books & Gift“ 絶賛営業中!
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