【#3】 僕のルートビア~怒りのデスロード~
2022.01.22(Sat)
text & photo: Yu Takada / THE ROOT BEER JOURNEY
edit: Yukako Kazuno
いまぼくはルートビアという飲みものをイベントのみで売っている。昨今流行りのクラフトコーラとよく間違われたりするのだが、そういう時は「“コカとペプ”の子分みたいなのが最近は流行ってますけどルートビアがこれからブッ倒していきます~」とか適当なビッグマウスギャグをぬかしつつ、お客さんをルートビア派に改宗させて楽しんでいる。
ぼくのつくる自家製ルートビアは、ハーブの配合や、炭酸度合いをイベントの度に変えたりしている。それを提供するやり方も毎回アップデートしている。その変遷をご紹介しよう。
2019 ROOT BEER TANK
最初はシロップをつくり炭酸水で割って提供していたのだが、やっぱり生だろと思い立ち、タップで出す樽生ルートビアを開始。

2020 ROOT BEER BACK PACK
ビールの売り子みたいにルートビアが出せたらウケるんじゃないかとバックパック型のディスペンサーを自作。ビールガンからルートビアをサーブする。満タンにして背負うとクソ重い。


2021 ROOT BEER BARREL DISPENSER
1940年代のアメリカでは生のルートビアが出る樽型ディスペンサーが商店などに置いてあった事を知り、DIYで再現。

2021 -PROHIBITION- COCKTAIL CABINET
一見ただの箱にしか見えないが実は酒が隠されている棚。コロナ禍の東京都で酒の提供が禁止になった事と禁酒法時代にルートビアが流行した歴史を重ねて製作。

という感じで色々と作ったものをイベントに持ち込んでルートビアをサーブしている。
こういう活動を始めた元々のモチベーション、ルートビアという飲みものに対して真剣になったキッカケは自分の中に沸き上がった“怒り”だ。
ぼくは沖縄から東京に出てきて、ルートビアが当たり前じゃないことにまずカルチャーショックを受けた。ふと飲みたいと思って、箱買いしようと東京中の普通のスーパーを探せども、何処にも売っていない。今までポピュラーだと思っていたものがこっちでは影も形もない。今でこそ、入口で無料のコーヒーを渡してくる輸入食品店や、その安さにペンギンもびっくりの量販店などにA&Wが稀に置いてある事を知ったが、当時ネット上にも日本でルートビアがどう流通しているのかの詳細はあまりなかったのだ。
圧倒的にルートビアの知名度がない現状に、東京の人々やシティボーイ達の感度を疑った。こんなに面白い味の飲み物知らないの?と。当時ぼく自身、人に説明する時に「湿布味のコーラみたいな~」というルートビアを冒涜するようなダサい説明をしていたのだが、そこでうまく伝えられないことに苛立ちや悔しさを覚えたし、いちばん好きな炭酸飲料であるルートビアのことを何も知らない事に気付かされた。好きなものが手に入らない怒り、好きなものに対して怠慢だった自分への怒り。そこからぼくのルートビアジャーニーは始まった。
ルートビアをいちから調べ、100種類以上飲み比べて研究していると今度は理想のルートビアが欲しくなる。ないなら作るしかないのだ。自家製のルートビア然り、上記の制作物も世の中にベストなもの、格好良いものが売ってないからムカついて作っているだけである。
結果つくることに夢中になって、稼ぐことが二の次になりがちなのをいつも友人達に怒られている。なにかをDIYすることは面白いけどとにかく面倒くさいことだらけなのだ。世の中の不便さに腹立ち、面白いと面倒くさいを繰り返しながらぼくのルートビアは進化を続けていく。この死ぬまで終わらなさそうな旅路はまだ始まったばかりだ。

高田ユウ / THE ROOT BEER JOURNEY
たかだゆう | 1990年生まれ、石垣島出身のアイランドシティボーイ。自家製の樽生ルートビアと数種類の世界のルートビアを取扱う空前絶後のルートビア専門店 THE ROOT BEER JOURNEY代表。フードイベントよりもアート系イベントに出没しがち。世界中のルートビアを飲む事と、琉球空手がライフワーク。
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