カルチャー
俳優・池松壮亮が「Think Week」に読む5冊。
テーマ:21世紀の社会
2021年9月21日
photo: Natsumi Kakuto
illustration: Naoki Shoji
text: Kosuke Ide

ムック本『僕たちはこんな本を読んできた』好評発売中!
コロナウイルスの影響で長く家にいた間、先行きも見えず、これからの日常がいつどんな形で始まるのかもわからない中で、自分が何を考え、どんなマインドになるのか、ちょっと俯瞰して自己観察していたようなところがあって。ふと家の中を見回してみると、以前気になって買ったまま読んでいなかった本がいくつもあったので、この機会にと手に取ってみました。
『21 Lessons』は『サピエンス全史』が話題になったハラリさんの最新作ですが、今まさに世界中で起こっている政治・経済、環境などの問題、直面している課題がどんなもので、今後どんな議論や実践をしていかなくてはいけないのかがすべてまとめられているような一冊です。内容はある意味、ショッキングでもある。進化するITとバイオテクノロジーが手を組むと、人間の脳がハッキングされ、アルゴリズムが私たちに代わって私たちの心を決める時代が来る。それはもう食い止められないのだ、と。人間は人生の目的や醍醐味、あるいは国家や宗教など、意味付けされた物語によって文明や社会を構築してきたが、それらの物語は実際には虚構にすぎない。これからの時代、そうしたものにしがみつくことは人間をより不幸にする、というようなもので。一見、現実離れした議論に感じられるかもしれないけど、このウイルスから始まった世界の動きを見ていると、以前は「まさか」と思っていたことが、たった数か月で一気に加速して噴出してきているわけですよね。環境、政治、経済、あらゆる面で社会にほころびが出て、その中で「もういい加減にしろ」という人たちが声を上げ始めている。そんな時代に、僕らはやはり思考をアップデートする必要があると思うんです。その手法について、ハラリさんは本書で、「意味にとらわれるな、瞑想と自己観察を通じて、発見と熟考を繰り返せ」というようなことを説いていて、どこか仏教的な思想を感じさせます。

一方で、『哲学と宗教 全史』は人間がこれまでそうした意味付けをどう行ってきたのか、どんな物語にすがって生きてきたのかという歴史をわかりやすく教えてくれる本。普段、映画の仕事をしていて、映画を考えればやはり人間に行き着くし、人間を考えれば思想や哲学に行き着く。それらはやはり人間の根源的な営みだと思うので、いつも関心を持っています。

『チベット仏教の神髄』には人生が苦しみに満ちているという大前提の中で、そこから解脱するにはどうするかという教えが説かれていて、時代・地域にかかわらず人間は常に同じようなことを考え、苦しんできたのだと感じて、考えさせられました。

重めの本が続いた後に、面白そうと手に取ったのが『店長がバカすぎて』。タイトルが冴えてますよね。組織の末端で働く人間なら必ず覚えがあるような感情。本書は小さな本屋で働く主人公の女性の物語ですが、実際に街を歩けば至る所で起こっているようなことだと思います。だけどこの小説は、相手を「バカ」と罵って分断してしまうだけでなく、さまざまな体験を経て、最終的に主人公が気付きを得ていくという、すごく優しい包み込み方をしてくれるんですね。ただ他人を責める前に、自分を見つめ直す。今、必要なのはこういう視線だと感じます。

『自分の感受性くらい』には、まさしくそうしたことを思い起こさせてくれる言葉がたくさんありました。「ぱさぱさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな みずから水やりを怠っておいて」というストレートなメッセージがすごくいい。今、社会で起こっている問題についても、原因に見える誰かを攻撃して終わるんじゃなくて、それが自分たちが巻き起こした何かなのかもしれない、と考えていかなければいけないと思う。グローバルとは蜘蛛の巣のように繊細に複雑に絡み合ってる世界だと思います。小さな自分に何ができるか、答えはないけれど、今、試されているという気がします。

プロフィール
池松壮亮
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