時は1968年。反社会運動真っ只中のカリフォルニアにて、新しい発想での自然回帰・ウォーキング哲学を提唱し、ヒッピーを大自然へと誘った『The Complete Walker』(著・コリン・フレッチャー)は、全米でベストセラーに。その後改訂版として登場した『The New Complete Walker』を、1978年に芦沢一洋が熱のこもった言葉で翻訳・出版し、日本でも空前絶後のバックパッキングブームが巻き起こった…。
それ以降、山を歩いて旅する者たちのバイブルとなった『遊歩大全』。文庫版ですら976ページもあるこの長旅をギュッとまとめて、目次順に解説!7回目は『家具と器具』。

– 快適に見る、記録する。-
フラッシュライト選びは、重量と光量における有効性を中心に、信頼性、便利さ、修理の容易さによる。コリンの愛用は〈マロリー〉の「デュラセル805」。250フィート(76m)先まで光が届き、プラスチック製で軽いので口にくわえ、両手を自由にできる。ヘッドライトはフランスの〈ワンダー〉。スペアバルブ(電球)は必ず用意。キャンドルランタンは夜の読書のために。サングラスは不可欠だし、雪の場合はスノーゴーグルを。なかでもビノキュラー(双眼鏡)は多くの思いがけない、倍増の楽しみとなるボーナスを得られると語る。遥か前方の道を眼前に出現させてロスを避けることも、火付けも、ロマン溢れる光景を望むこともできる。一眼レフカメラとドッキングして撮影することも(ビノフォトグラフィー)。カメラはコリンも好きだが、写真を撮らず、じっくりと見るために立ち止まり、記憶のフィルムに本当のイメージを定着させる喜びも。
– コリン流・地図の使い方。-
諸刃の剣ではあるが、地図なし、あるいは概略図だけで山を旅すれば、興味をそそる思いがけない出来事、ミステリーが次々に出現し、自然への理解はいっそう深まる。コリンはここで独自の理論「理解反比例の法則」を展開。曰く、「人と環境の間に存在するものが少ないほど、人は環境をよりよく理解することができる」。大勢の人間が歩き慣れたトレイルからさらに外れて一歩踏み出し、未開の自然の上を歩くとき、はじめて本当の自由を手に入れることができる、と。この考えもあってか、コリンはガイドブックに対しては痛烈に批判。なお、コンパスは必ず持参する。
– その他の便利な用具リスト。-
トイレットギア(石鹸、小さいタオル、歯ブラシ、歯磨き粉、トイレットペーパー、ハサミ、カミソリ、鏡、フットパウダーとアルコール液、虫除け、肌のために日焼け止めやローションなど)、エマージェンシー用品(バンドエイド、ガーゼ、抗生物質、鎮痛剤、便秘用ラクサティブチョコレート、縫い針、発煙筒、照明弾、ホイッスル、フリントスティック、釣具、ロープなど)、精神用品(本、メモのためのノートとペンなど)、計測器具(時計、温度計など)、修理道具(ナイロンテープなど)、道草を楽しむための遊具、いつでも役立つ実際的な必需品(ナイロンコード、デンタルフロス、ゴムバンド、ビニール袋、35㎜フィルムケース、ベルトクリップなど)……、それと、パーソナルなもの!
