TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
CULTURE

【#3】クジャク

2021.07.24(Sat)

7月も中旬になりましたが、北海道旭川は例年にない暑さが続いています。天気予報を見てもいつまでも晴れマークが並んでいます。ここはどこだ?って感じです。世界中で例年にない異常気象が起きていますね。目先のコロナ対策も大変ですが、もう少し先の未来にもしっかりと目を向けた対策も怠ってはいけませんね。

 さて今回もオスとメスに関わる話にしようかと思います。カモやキジの仲間は比較的大型の種が多くて、タカなどの猛禽類、キツネなどの肉食獣に狙われる側の鳥たちです。私たち人もアヒルやニワトリなどに家畜化してきました。食べ応えもあり味もいいので肉食系動物にも人気があります。狙われる側食べられる側でありながら、繁殖期(交尾期)のオスはこれでもかというくらいに派手で美しい彩りの羽で飾っている種が多いのです。見つけてくれ、さー捕まえてみろ!と言わんばかりの目立ち度なのでまさに命がけの恋の季節になります。一年中派手だとさすがに生き残れないので繁殖期が終わるとメスのような地味な羽色に衣替えをします。メスは一年中とても地味な羽色でいわゆる保護色です。カモやキジの仲間は交尾をした後、巣作りや抱卵、育雛まですべてメスが単独で行います。雛は孵化するとすぐに巣を離れメス親と行動を共にします。エサは親からの口移しではなく自分で採食します。これがメスが単独で多数の雛を育てることができる秘訣です。

繁殖が終わり、美しい羽が抜け地味になったオスのクジャク。

 別にオスが危険を冒してまで派手になる必要なんてないのでは?そう思われるかもしれませんが、メスの美意識(我が子の生存確率を高めるため)によるオスの選択の結果だと言われています。より綺麗なオスは当然健康状態もよく、より目立つのに生き残っている強い生命力を持つ個体、と言うことになります。メスは子孫を宿す訳ですから本能的により美しいオスに惹かれ選択するというわけです。 繁殖期になるとオスは「僕はこんなに綺麗で立派だよ!」とメスにアピールをします。典型的な種で皆さんもよく知っているのがキジの仲間、クジャクでしょうか。

  クジャクのあの扇型の飾り羽根は私たち人から観てもやり過ぎじゃね?と感じるくらいのボリュームです。食物連鎖の中では明らかに捕食される確率を高め致命的な結果になりかねないレベルに思えます。もちろん飾り羽根をつかんでもトカゲの尻尾じゃないけどすぐに抜けるのでクジャク本体を捕まえられないようにはなっているのですが、逃げ切るための初動の鈍さの原因になるでしょう。でもこれがメスの選択による結果なのです。この選択の基準が変わらなければより立派な飾り羽根を持つオスが選ばれ続けることになりますが、もしかしたらこの選択が将来クジャクという種を滅ぼすのではないか?異性による選択で種が滅びる生物史上初めての例になるのではとさえ言われています。

 私たちホモサピエンスは、生態系から離れ食物連鎖の輪から抜け出したことで、ある意味ホモサピエンスの中だけで、何でもありの状況になりました。それぞれの時代や文化によって驚くような基準の異性の選択があったり、着飾るための装飾品があふれていたりします。現代は性に対しても様々な感じ方を持つ時代です。多様な価値観を認め合い共有する中で、自分らしさをどのように表現していくようになるのでしょうか。

横からクジャク。

プロフィール

旭山動物園

昭和42年、日本最北の動物園として開園。市外や外国からの観光客も合わせて毎年140万人前後の入園者数を誇る。国内動物園で初めて繁殖に成功した動物園に送られる「繁殖賞」を、ホッキョクグマをはじめ、20回受賞している。

公式instagram公式twitterはこちら。旭山動物園の動物を24時間ライブ視聴できる動画配信サービスも提供中。
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