TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#3】モザイクやってます。/モザイク制作の流れ
執筆:ヤマダカズキ
2025年11月27日
こんにちは、モザイク作家のヤマダカズキです。
今回は、私が普段どのようにモザイクを制作しているのかをご紹介します。「こんな感じで作っているんだ」と、少しでもイメージしていただけたら嬉しいです。
私が基本的に用いているのは、古代から続く技法「オプス・テッセラトゥム(Opus tessellatum)」です。この技法は紀元前3〜2世紀頃から使用され、ローマ帝国の拡大とともに地中海沿岸地域で普及していきました。
石を加工し立方体にしたものを「テッセラ」といいます。意味はまさしく「小さな立方体」。絵を描くにはたくさんの色味のテッセラを準備しなくてはなりません。
そのため、まずは石を割る作業から始まります。使うのはモザイク用の半月型ハンマーと刃を垂直に固定した石割り台。石割り台の刃とハンマーの刃を水平に合わせて、こう!
石の割り方
御影石や蛇紋石(じゃもんせき)は硬くて力がいりますが、大理石はけっこう簡単に割れます。ズマルト(モザイク用ガラス)は力を入れすぎると粉々になってしまうので注意が必要です。
細かくしていく際は、気をつけないと指先を挟んでしまい血豆ができちゃいます。
私は木製のパネルなどに石を貼って作品を制作しています。石と木製パネルはセメントモルタルで接着していきます。
セメントモルタルはセメントと砂、接着剤(水+エマルジョン)を混ぜたものです。
はじめに一層モルタルで地塗りし、乾いた後に下絵を描きます。その上に接着用のモルタルを塗り、石を貼っていくというわけです。接着用のモルタルを塗った際に下絵が消えてしまうので、モルタルにナイフで目印をつけています。
制作工程
石を砕いて貼る、また砕いて貼る、それを繰り返しながら、画面全てを石で覆い尽くすことができれば完成です。簡単に見えて、この作業が思ったより時間がかかるのです…。
シンプルな制作工程ですが、石の流れをどうするか、石と石の間隔はどうするのか、表面に凹凸をつけるのか、もしくは平滑に仕上げるのかなど、表現の幅はとても広いです。
石が徐々に埋まっていく過程
たとえば古代の舗床(ほしょう)モザイクは平滑につくられていますが、壁面モザイクは結構凹凸があったりします。床はつまずかないよう平らにする必要がありますが、壁はその心配がないためです。
あえて角度をバラバラに貼って、テッセラの表面を凹凸にすることで、光が当たった際に乱反射して、キラキラきらめく壁面となるのです。モザイクで飾られた聖堂に入ると、時刻や見る角度で見え方が変化していきます。この手法はビザンチン帝国時代に盛んに用いられ、キリスト教世界の神秘的な光を象徴的に表現していました。
工程のシンプルさとは裏腹に、とても奥深い世界がモザイクの技法なのです。
プロフィール
ヤマダカズキ
1995年、熊本県⽣まれ。モザイク作家。東京藝術大学にてモザイク技法を学ぶ。日本各地の民話や伝承といった土地固有の記憶を、モザイク作品として記録、保存することをテーマに活動し、伝統的な技法と現代的な感覚を融合させた表現を探究している。2025年12月13日より、『ポーラ美術館』(箱根)にて美術館での初個展を開催する。
Official Instagram
https://www.instagram.com/yamadakazuki.art/
Official Website
https://www.yamadakazuki.online/
ポーラ美術館|ヤマダカズキ「地に木霊す」
https://www.polamuseum.or.jp/sp/hiraku-project-vol-17/
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