TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#1】紙を裂いて、編んで、また紙に戻す

執筆:リヴォトルト・ピーシーズ

2025年8月15日

はじめまして。私たちは「Rivotorto Pieces(リヴォトルト・ピーシーズ)」という名前でものづくりをしています。「ものづくり?何を?」と尋ねられたとき、私たちは普段このように答えます。

「裂いた紙を編んで、あらためて一枚の紙に戻しています。」

そうすると相手は奇妙なおまじないを聞いたかのように、余計にハテナを増した表情を浮かべます。「なぜそんなことをしているの?何になるの?」と重ねて尋ねられます。その二つ目の質問に私たちはわかりやすい回答をすることができず、お互いの戸惑った表情を見て思わず笑ってしまいます。なんでこんなことをしているのでしょう。どうも今回も簡潔に書くことは難しそうなので、最終回までにうまく綴れるようにがんばってみます。そのトライの軌跡でもある4回のコラムです。その中で紙の魅力を再発見いただけたら嬉しいです。

紙を裂いているところ。

コレクションしているさまざまな紙。

今回は「そもそも裂いて編んだ紙って何?」という疑問に対してお答えします。その制作工程は言葉の通り単純なものです。

まず紙を帯状になるように裂きます。次に裂いた紙を十字に重ねて編んでいきます。最後に編んでできた隙間を全て貼り合わせることで、新たに一枚の紙が仕上がります。
「言葉を編む」とも言うように編む行為には文字との関わりが感じられます。紙の歴史は文字の歴史とも重なっていて、人が書き言葉を発明したときから時代や地域の特性にあわせて、粘土板や蝋板、パピルスに羊皮紙、そして紙へと書写素材は変化してきました。

そんな歴史を楽しみながら私たちは紙を編んでいます。
百聞は一見にしかずですね。作品の写真をご紹介して今回は終わります。

ネパールで作られた紙と和紙を編んだ1枚。

赤い罫線の揺らぎが美しい古い原稿用紙を編んだ紙。

植物そのままの色が美しい和紙を立体的に編んだ紙。

自分たちで型染めした紙を裂いて編んだ紙。

最後に、出会った紙を1枚。ヴェネツィアのサン・ジェレミア教会に飾られたパピルス紙です。パピルス紙も繊維に沿って十字に重ねて作られます。とても美しく見入ってしまいました。

サンタ・ルチアの眠る、サン・ジェレミア教会にて。サンタ・ルチアの故郷シラクーサでは古くからパピルスが育ちパピルス紙作りが行われました。

プロフィール

Rivotorto Pieces

リヴォトルト・ピーシーズ|「Paper Textile(紙のテキスタイル)」を展開する小島沙織と島田耕希によるユニット。東京藝術大学デザイン科在学中より二人での制作活動を始め、2016年にクリエイティブスタジオ〈SHIMA ART&DESIGN STUDIO〉を設立。各地から収集したさまざまな紙を素材に、破る/編む/貼る/染める/描くことを手法とし、歴史、文化、生活に根差したグラフィックデザインや図案を制作する。2023年『FRAGILE BOOKS』にて個展「Passage of Paper Textile / 紙々の断章」、2024年『twililight』にて個展「鳥渡の浮遊」を開催。同年より〈written by〉のテキスタイルのアートワークを担当。また、小島沙織は型染め作家としても活動し、2023年に日本民藝館展奨励賞受賞。

Instagram
@rivotorto_pieces