TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#4】Future Days Shopの日常とサウンドトラックの7インチ
執筆:Tomo Katsurada
2025年8月2日
早いもので、このタウントークも今回で最終回となりました。
7月を振り返ってみると、本当にいろいろな出来事がありました。
僕は“Bootleg Bunny Show”という音楽イベントを運営しています。アムステルダムを拠点に活動する友人のミュージシャンやDJたちと共同で企画することが多く、会場はいつもお気に入りの「De Nieuwe Anita」。手前には落ち着いたラウンジ、奥には地下のダンスホールが広がっていて、カクテルも美味しく、ハウスパーティーのような雰囲気が魅力の場所です。
7月には、コメディとクラウトロックをテーマにしたイベントを開催しました。オープニングは、僕たちが大好きなアメリカ人コメディアン/DJのNina Tarrによる、破壊力満点のスタンドアップコメディ。続いては、この日のために結成された6人編成のクラウトロック・ジュークボックス。Bo NingenのKoheiくん、Jacco Gardnerなどなど、そして僕を含むメンバーで、Neu!の“Hallogallo”から始まり、“Echo Waves”で宇宙へ昇天。人力による終わりなきコズミック・トランスを展開。多忙だった脳が一気にリセットされるような夜でした。
また、7月には細野晴臣さんのヨーロッパツアーも開催されました。残念ながらアムステルダムでの公演はありませんでしたが、ロンドンとパリでのライブに合わせて、水原希子さんやYuka Mizuharaさんの協力のもと、各地で限定マーチャンダイズのポップアップが行われました。そして、彼女たちとの素敵なご縁から、アムステルダムでもポップアップを開催できることになりました。
Future Days Shopでは、8月7日から約1週間にわたってポップアップを開催予定です。現在、当店限定の一点ものマーチャンダイズも鋭意制作中。ヨーロッパの夏の空気を感じながら、ここアムステルダムで日本のカルチャーを共有できることが、心から嬉しいです。
さて、最後の回となった今回、お店の壁絵について話したいと思います:)
壁画は、オランダ人アーティスト Gijs Frieling と Job Wouters のデザインデュオ「Frieling & Wouters」によるもの。
1880年築の建物がもつアール・ヌーヴォーの外観のカラーをベースに、その雰囲気を店内に取り込みたく、デザインしていただきました。
外壁のデザインそのまま、昔はこのお店は果物と魚のお店でした。その歴史あるコンセプトを店内に持ち込みたく、凧のデザインにのせて完成させてもらいました。。“凧揚げ”には未来の吉兆を願う意味もあり、この店のルーツを未来へ放つ。そんな思いも込められています。
Gijs Frieling とは、Kikagaku Moyoのラストアルバム『Kumoyo Island』でコラボレーションして以来の仲。彼の展覧会に足を運ぶたび、新たな刺激をもらっています。
尊敬するアーティストたちに囲まれてこの店を運営できることは、本当に光栄なことです。
毎日この空間にいるだけで、自分自身も自然とインスピレーションを得ています。
彼らの作品はオランダ国内にとどまらず、世界中で展開されているので、もし機会があればぜひご覧ください!
さて、今回で最後となる7インチ紹介は、僕の大好きな映画サウンドトラックのレコードから、いくつかお気に入りをご紹介します。
左より、
1. 一柳慧『エロス+虐殺』より “ジャズロック”
1970年に吉田喜重監督によって制作された白黒映画『エロス+虐殺』のサウンドトラック。白昼夢のような映像美とサイケデリックな演出、そして一柳慧による音楽の融合が見事で、僕にとって映画映像製作に目覚めるきっかけになった作品です。
中でもこの“ジャズロック”という楽曲は、即興的で中毒性あり。いつ聴いても満たされる1曲。そしてなんと演奏は細野さんも在籍したエイプリルフールによるもの。
2. Gabriel Yared “C’est le vent, Betty”
映画『ベティ・ブルー』のテーマ曲で、僕のパートナー・Eloïseが毎朝聴いていた大切な曲。聴きすぎて夢にまで出てくるようになり、自分でもカバーを作りたくなって、昨年リリースしたソロアルバム『Dream of the Egg』に収録しました。原曲の作曲者であるガブリエル・ヤレド本人にも気に入ってもらえ、リリースできたことはとても光栄です。
3. 『ラスト・タンゴ・イン・パリ』より
ベルナルド・ベルトルッチ監督による1973年の名作。オリジナルサウンドトラックはガトー・バルビエリによるもの。
あの官能的メロディー。
様々なアーティストによるカバーバージョンが存在しますが、僕はその中でも特にお気に入りの1枚。キューバ出身のミュージシャン、Mongo Santamariaが1973年にカバーしたアフロキューバンバージョンです。官能的な旋律に蠢くスローグルーヴ!
これまで4回にわたって、アムステルダムの『Future Days Shop』や、僕の7インチレコードコレクションを紹介してきました。
ぜひヨーロッパを訪れる機会があれば、アムステルダムに遊びに来てください!
そして今年11月、僕は日本ツアーを行います。昨年の11月に東京現代美術館のTOKYO ART BOOK FAIRにて初コンサート。以来、今年6月のヨーロッパツアーでは、教会とアートスペースを中心に演奏しました。日本でもユニークなスポットを中心に現在企画進行中です:)
昨年リリースした、絵本とレコードが一体となった作品『Dream of the Egg』を携えてのパフォーマンスとなります。ライブでは、Kikagaku Moyoのベーシスト Kotsuguy、そしてアムステルダムを拠点に活動する 友人のミュージシャンJonny Nash とのトリオ編成。
Jonny も今年新作をリリースしたことから 今回はソロミュージシャン二人によりダブルヘッドラインジャパンツアーとなります。
詳しい情報は僕のホームページやInstagramをチェックしていただけると嬉しいです。
ぜひ日本で皆さんとお会いできること楽しみにしています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました:)
またどこかでお会いしましょう!
プロフィール
Tomo Katsurada
とも・かつらだ|サイケデリックバンド Kikagaku Moyo の創設者であり、ギター・リードボーカルとして世界的に活動。バンドの無期限活動休止後は、オランダ・アムステルダムを拠点にソロアーティストとしてのキャリアをスタート。2025年には、デビューソロアルバム『Dream of the Egg』を携え、初のヨーロッパ・ソロツアーを成功させる。
自己探究の延長として始めた7インチレコードの収集をきっかけにDJ活動も展開し、J-WAVEやWorldwide FMにてラジオ番組を担当。テキスタイルアーティストであるパートナーの Eloïse Ptito とともに、2024年6月にアート・音楽・衣服を融合させたコンセプトストア『FUTURE DAYS SHOP』をアムステルダムにオープン。
Instagram
https://www.instagram.com/bootlegbunny/