TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#2】リナ・ボバルディについて
執筆:Gallery CASA DE
2025年7月16日
ブラジルの首都はブラジリアです。(ちなみにスタッフの1人は成人するまでリオだと思っていました…サンバの街…)1960年にリオ・デ・ジャネイロから遷都された内陸の都市・ブラジリアは、上空から見ると鳥のかたちをした都市計画が広がっていて可愛らしい。
この国づくりの動きは、建築や家具のデザインにも大きな影響を与えます。移民がもたらした多様な文化背景と、ブラジルの風土や素材、暮らしに根ざした価値観が交わることで、「ブラジリアン・デザイン」という独自のスタイルが生まれていきました。
一口にブラジリアン・デザインといっても、その表現はさまざま。共通しているのは、クラフト的な温かみと彫刻的な造形、そして土地の暮らしに根ざした実用性です。現地では、自分たちの土地に合った家具を好んで使ったため、 これらの家具は国内流通が中心となり、国際的な注目が遅れた一因となりました。
例えば、ブラジルの代表的な建築家として知られるリナ・ボ・バルディもその一人。イタリア出身の彼女は戦後の政治的混乱を背景にブラジルへと移住し、自邸「ガラスの家」(1951年)をはじめとする建築作品を数多く手がけました。建築と並行して、「SESCポンペイア」では厚みのあるパイン材の椅子、「ベナンの家」ではカフェテリアの家具としてジラファチェアを設計しました。どちらも地場の素材を用い、地域に根ざしたデザインを実現しています。
私たちは、実際にブラジルを訪れ、リナと仕事や生活を共にした方々、現存する工房との交流を重ねてきました。そうした出会いを通じて、書籍には記されていない出来事や創作の背景など、記録だけでは知り得ない生の声に触れることができました。これらの体験の積み重ねが、日本での展開へとつながっています。
また、リナは生前に日本を訪れており、二度目の来日となった1978年には鎌倉・円覚寺を訪れました。その地を会場として、2023年には私たちがリナの回顧展を開催。日本とブラジル、両国の文化が交差する視点から、ブラジリアン・デザインを捉え直す試みを続けています。

2023年、円覚寺での展示風景。
(https://youtu.be/71-upszpA4o?si=q5YO9AG15UKPXYQM)
ー「私にとって建築とは、お皿いっぱいの食べ物を持った老人や子供が、集団のテーブルに座る場所を探して優雅にレストランを横切る姿を見ることだ」
生前リナはこのように語っています。建築を“人が過ごす風景”の一部として捉え、建築そのものではなく使う人こそが主役であることを表現していると私たちは考えています。使われ続けるその姿を見つめる彼女の視点には、優しさだけでない信念がにじんでいます。
プロフィール
Gallery CASA DE
ぎゃらりー・かさで|ミッドセンチュリー期を引き継ぐアトリエによるリ・エディション家具からコンテンポラリー家具を取り揃えるギャラリーとして展開。展示会や企画展なども行う。
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