TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#2】わたしの洋服遍歴
執筆:イモトアヤコ
2025年7月18日
前回に引き続き洋服のお話。
芸人になり、運の良いことにメディアに出れるようになったことで今まで手が届かなかったブラントの洋服も買えるようになってきたわたしは、分かりやすくハイブランドにはまった。
バレンシアガ、ベトモン、マルジェラ、ロエベ…
生意気にも南青山を意気揚々と練り歩いていた。
けれどこれがまた実に面白く、勉強になった。
実際にデザインというものに触れ、なぜこのロゴがあるだけでTシャツが数万円もするのか、生地感や着た時にしか分からない形など全てが刺激的であった。
またお店の方の知識と熱量も凄く、どういうものを組み合わせればよいのか、そんな手があったのかと、その仕事っぷりにも感動した。
ブランドの色だけではなく、どのデザイナーさんの時期かで全然雰囲気が変わることも知った。
そんなイケイケ期を経て、35歳の時妊娠、そして出産した。
これを期にファンションがガラッと変化した。
というか洋服というものに意識があまりいかなくなったのだ。
とりあえず何かは着るけど、何でも良い。
なるべくウエストはゴム、体型が隠れるもので、動きやすいものでという感じであった。
そんなことより目の前の子育てにいっぱいいっぱいだったのだ。
そして無意識のうちに、母親らしいものを、公園に行っても浮かないようなものを、といった洋服を着るようになっていた。
まさに大学生活の始まりと同じである。
ファッションを楽しむ余裕がなかったのだ。
そんな感じで1年近く経った時だった。
スーパーで買い物して何気なく歩いていると、外から見ても素敵な洋服屋さんが見えた。
ふらっと入ってみたところ、古着屋さんであった。
店員さんにすすめられ、そのときの自分では絶対に着ない、派手な重いプルオーバーのパーカーを着て鏡の前に立った時だった。
その瞬間、わたしの中の全細胞が
「これだーーーーーーー!」と叫んだ。
なんか分からないけど強烈に嬉しかった。
蓋をしていたものが一気に外れ、洋服が好きという気持ちが溢れた。
と同時にいっぱいっぱいだったんだという自分にようやく気づけた。
誰かに合わせるとか、母親らしくが先行していたが、一番大切なのは自分がどうしたいか、自分らしくいるためにはの方だった。
それを古着が教えてくれたのだ。
そこからははまりにはまり、とんでもない勢いでクローゼットが埋まっている。
これからも自分の「好き」を模索しながら洋服を楽しみたいなと思う。
プロフィール
イモトアヤコ
いもと・あやこ|1986年、鳥取県生まれ。2007年より日本テレビ系バラエティ『世界の果てまでイッテQ!』に出演。2009年には日本テレビ系チャリティー番組『24時間テレビ32 愛は地球を救う』でチャリティーマラソンランナーを務め、話題に。バラエティ番組を中心に、TBSラジオ『イモトアヤコのすっぴんしゃん』(水曜23:00〜)や、エッセイ本『棚からつぶ貝』『よかん日和』(ともに文藝春秋)を刊行するなど、活動は多岐にわたる。
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